雨降る日のキセキ
「嘘だって言ってよ…!!」


「嘘じゃない。全部ホントのことなんだ」


「だって名字が違うじゃんっ」


私は信じない。


千隼くんのせいで朝陽くんが死んだなんて、絶対に信じない。


「兄貴が亡くなってから母親が再婚して名字が変わった」


「ちがう…。嘘だよ…っ」


でも確かに、千隼くんと朝陽くんのフォームは酷似しているし、右投げ左打ちなのも同じ。


千隼くんから語られたお兄さん像は朝陽くんと重なる。


それでも私は認めない…っ。


「それを知ったのが、翔吾が怪我した頃なんだ。俺、千紘と一緒にいるのが苦しくなってさ…。だから避けてた。本当にごめん」


「…ホントの話なの?」


「ホントだよ。千紘が長年苦しんでたことを知ってるのに、苦しめてた張本人が俺だったんだ。最低だよな…」


…嘘だと言って…。
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