雨降る日のキセキ
そんな現実、受け止めきれない。


信じたくない。


「俺のせいで何年間も苦しめたのに、また傷つけてしまった。もう、戻れねぇよ。何も知らずに楽しかったあの頃にはもう…」


……っ。


全部…千隼くんが…。


「…謝って済むことじゃないのは分かってる。それでも…本当に悪かった」


深々と頭を下げる千隼くん。


さっきみたいに、顔を上げてなんて言えなかった。


ショックからか思い出せなくなっていた7年前のあの日。


今では不思議なくらいハッキリと思い出せる。


同い年くらいの男の子が朝陽くんの身体を押し、よろけて後ずさったところへトラックが突っ込んできた。


あのときの男の子が…千隼くん…?


ずっと憎んていた運転手が、華のお父さん…?


わからない。


私はこれから、どうやって千隼くんと話せばいいんだろう。


千隼くんに嘘偽りない笑顔を向けられる自信がないよ…。
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