雨降る日のキセキ
「もし、俺が野球部に戻ったら千紘は嫌?」


「嫌なわけないじゃん。過去の話と野球のことは別々の話だよ」


千隼くんが戻ってきてくれたら一気に甲子園が近づく。


皆、それを望んでる。


私はそのときのために野球部を守ろうとしていた。


嫌なわけがない。


そりゃ、どんなふうに千隼くんと関わればいいのかは分からない。


でも、間違いなく千隼くんは必要な戦力なんだ。


「俺のせいで千紘は嫌な思いをさせられた。だから、これ以上はもう傷つけたくない。俺が野球部に戻って赤坂から千紘を守る」


「千隼くん……」


翔吾と千隼くん。


二人いたら今よりは安心だ。


もし赤坂くんが近くに来ても、千隼くんなら絶対に守ってくれる。


「ありがとう。私、部活頑張るね」


一緒に甲子園に行こうね。


そう、素直に言うことはできなかった。


千隼くんが野球部に戻ってきてくれることは嬉しい。


でも、これから上手く接することはできるかな…。


わからない…。


「じゃあ…先に帰るね」
 

どう向き合っていいか分からない現実から逃げるように、足早に公園を立ち去る。


千隼くんから逃げたんだ。


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