雨降る日のキセキ
「その人も野球がすごく上手くて、甲子園を目指してたの。

それでね…約束してくれたんだ。

私を甲子園に連れていくって。

だけど、その約束をした次の日に亡くなっちゃって…。

私、忘れらんなくてさ…。

何年も引きずって、今でも甲子園に行けばその人に会えるんじゃないかって思っちゃうの。

バカだよね…」


朝陽くんに会いたい。


会えるわけない現実をいつまでも受け入れられない。


もしトラックの運転手が飲酒運転をしなければ。


朝陽くんは今でも生きてたのに。


朝陽くんを殺した運転手を見つけてメチャメチャにしたいと思ったこともある。


今でもたまに思うんだ。


こんな黒い感情を持ってるなんて知られたら、皆ひいちゃうよね…。


いったい何年前の恋を引きずってるんだろうね…。


本当に私はバカだ。


「いい加減前を向けって話だよね…」


「…んなことねぇよ。無理する必要ない。俺だって何年経っても苦しいし、後ろを向いてしまう時もある。それに、それだけ忘れられないってことは、すんげー素敵な人だったんだろ。いいことじゃん、そんな人に出会えて」
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