雨降る日のキセキ
「そういうことだったのかよ。スマホ持ってないって嘘言い出すから傷ついたんだけど」


「えへへ、ごめんごめん。でもあの時はホントにしつこい人だなって思ってたよ」


遠慮して少し離れた位置に立っている千隼くんにグイッと近づき、顔を覗き込む。


「面と向かってそんなこと言うなよ」


千隼くんは私を軽く睨んでから、ブレザーを肩にかけてくれた。


「…ありがとう…」


なんとなく、雪解けの瞬間が来た気がした。


ブレザーを通して千隼くんの温もりが伝わる。


ブカブカの袖に腕を通し、前ボタンを1つしめるとより強く温もりを感じられる。


「あのね、千隼くん」


本題に入ると、千隼くんは真剣な顔で私を見つめてきた。
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