雨降る日のキセキ
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「よぉ」
部活中、恐怖を感じさせる声は一つしかない。
「赤…坂くん…」
選手と真子ちゃんはランニングに行っていて、グラウンドには誰もいない。
用具の手入れや整理をするため、私一人だけが体育倉庫に残った。
まるで私が一人になるのを待っていたかのようなタイミングに、恐怖で身体が固まる。
「この前は邪魔されたけど、今日は邪魔させねぇ」
「…来ないで」
私に恐怖を味わわせるためか、一歩一歩ゆっくりと近づいてくる。
また、この前みたいなことされたら…。
「お願い…来ないでよ…っ」
ジリジリと倉庫の奥に追い詰められるにつれ、全身の力が抜けていきそうになる。
「そんなに俺が怖いなら部活辞めりゃいーじゃん。クラスも違うから会うことなくなるぜ?」