雨降る日のキセキ
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「落ち着いた?」
どれくらい千隼くんの腕の中にいただろう。
身体中の水分を流してしまったようで、口も喉もカラカラだ。
部員からは見えない倉庫の裏でずっと私に付き合ってくれていた千隼くん。
ユニホームの胸元がびしょ濡れになっている。
「ごめんね…」
「なんで千紘が謝るんだよ。全部俺が悪いんだから」
“全部俺が悪い”
その言葉に胸をえぐられた気持ちになる。
千隼くんは、ずっと過去を引きずって生きてきたんだよね…。
“俺は甲子園に行かないといけない”
今ならあのときの言葉の意味が痛いほどよくわかる。
兄を殺した贖罪。
そうやって千隼くんはずっと重荷を背負ってきたんだ。