雨降る日のキセキ
「ねぇ、知らないの?あんたの大切な人を突き飛ばしたのはコイツなんだよ?桜庭朝陽だっけ?可哀想にねぇ?コイツがいなかったら、その朝陽って人、今頃あんたと付き合ってたかもね?」


…っ。


「大切な人を殺した男と付き合うってどんな神経してんの??」


「てめぇ、いい加減黙れ」


翔吾が一歩前に出てくれたけど、華は止まらない。  


「あたしなら考えられないなぁ。人殺しの彼女なんてぜーったい嫌だもん」


「黙れっつってんだろ!!」


「黙らせたかったら、赤坂にやったみたいに力でねじ伏せたら?」


翔吾が手を出して来ないのを分かって挑発する華。


翔吾は悔しそうに顔を歪め、近くの机を叩きつける。


「できないなら黙ってくれる?邪魔なんだよね。それともまた階段から突き落とされたい?今度こそ野球できなくなっちゃうかもね」


キャハハハハ!という笑い声が静かな教室に響き渡る。


「人殺しさんさぁ…、黙ってないで何か言ったらぁ?お友達、すごく怒ってるよー?」


「黙れ」


「あんたは、千紘の好きな人を殺して、あたしのパパを人殺しにしたんだよ?分かってる?」


“人殺し”という単語が発せられる度に、千隼くんが私の手を強く握ってくる。


「だからあたしはあんたを許さない。あんたが大切にしてるものは全て奪う」
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