雨降る日のキセキ

静かな空気が戻った教室。


遠くから吹奏楽部の奏でる音色が聞こえてくる。


やっと終わった…。


やっと赤坂くんの恐怖から解放される…。


途端に安堵が込み上げてきてヘナヘナとその場に座り込む。


「大丈夫か？」


「大丈夫…。ちょっと、安心して力抜けちゃって…」


千隼くんに支えられながら椅子に座り直す。


「千紘があんなに強気で言い返すしたのは意外だったな」


翔吾がふっと笑って言った。


「あまりにも酷い言い様だったから頭に来て…」


私は何を言われても構わないけど、千隼くんが傷つけられることだけはどうしても許せなかった。


「あぁいう風に言ってくれて嬉しかった。ありがとな」


優しく頭を撫でられ、荒波だっていた心が落ち着いてくる。


千隼くんのこの温もりが好き。


優しくて温かくて、愛を感じるんだ。


「……イチャつくな。部活戻るぞ」


「…うるせ。千紘はどうする？いろいろあったし早退すっか？」


「ううん、大丈―」


「早退しとけ。お前の大丈夫は信用ならねぇ。どんだけ俺が苦労したと思ってんだ」


「千紘を助けたいって泣きそうになりながら俺に話しかけて来たぐらいだもんな」


「あ？うるせぇよ。元はと言えばてめぇのせいだろうが。過去がどうのってメソメソしやがって。おかげでこっちは大迷惑被ったんだっつーの」
　　

「んなことより、赤坂に何したんだ？」


「都合の悪い話は無視かよ。なんだコイツ」


半年前のような仲が良いのか悪いのか分からない二人だけの会話。


失いかけた時間が戻ってきたようで、本当に嬉しい。


このかけがえのない毎日を大切に、日々を生きていこう。


もう後ろは向かない。


前だけを見て、夢に向かって突き進む。


誰にも邪魔はさせない。


千隼くんと、翔吾と、大切な仲間と、一緒に夢を叶えるんだ。