雨降る日のキセキ
決勝戦
雲ひとつない晴天が頭上に広がっている。
少し動いただけで汗が滲む。
電光掲示板に記された【決勝戦】の文字が私たちに緊張を与える。
去年と同じで、先攻が北野、後攻が鶴海。
地元の新聞紙にはリベンジマッチと題して報じられている。
試合前、ベンチに集まって監督の話に耳を傾ける。
「ついにここまで来た。
俺は監督として未熟で、光西や鶴海の監督のように付きっきりでお前らを見てやることもできなかった。
それでも、お前らは自分なりに練習を考え、一致団結して取り組んできた。部内で対立やトラブルもあっただろうし、逃げ出したくなったこともあったと思う。
いろんなことに耐えてきたお前らは強い。他のどこよりも強い。そう自信持って戦え。
俺は、お前らを今日引退させるつもりはない。いいな」
監督の力強い言葉で、今までのことが一気に蘇る。
千隼くんの入部、予選での快進撃、悔しい敗退。
本気で取り組んだ合宿、翔吾の怪我、千隼くんの離脱、赤坂くんのこと。
本当にいろんなことがあって、ツラくて辞めたくなったこともある。
それでも今、私はここにいる。
隣には千隼くんがいて、翔吾もいる。
かけがえのない仲間がいる。
「さぁ、声出し!千隼いけ!」
千隼くんが円の中心に出てくる。
その顔つきは凛々しくて、弱気だった姿は少しもなかった。
「今日が最後の円陣だとは思ってない。だから特別な何かを言ったりすることはない。いつもと同じ。ただ全力で勝ちに行くまで。絶対勝つぞ!!」
「「おうっ!!」」
大声が空に浮かんで散る。
そして、試合開始を告げる音が空高く響いた―