雨降る日のキセキ
「全然まだいける」


「球の質がかなり落ちてた。ホントにいけんのか?」


展開的に先に点を取られたら負けだろう。


1点もやれない中での終盤。


「大丈夫だって。ほら、さっさと行くぞ」


千隼くんはそう言ってるけど、本当に大丈夫なのかな…。


接戦になればなるほど、千隼くんが調子を崩さないか心配になる。


突然投げられなくなったら…と思うと怖い。


やっとの思いでここまで来たんだ。


もう負けたくない。


悔しい思いをして引退するのは嫌だ。


「千隼くん…」


「そんな顔すんな。俺は大丈夫だから」


千隼くんはそう言い切って8回のマウンドに駆けていった。


スコアに並び続ける0。


この回も0で終わりたい…。
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