雨降る日のキセキ
ホントに打った…。


ホントに1点とった…。


半ば放心状態になりながら、スコアブックにホームランの印を刻む。


「お前ヤバすぎ!!」

「最高だわ!」

「マジでよくやった!!」


翔吾は、ベンチで皆から絶賛されても顔色1つ変えずに千隼くんの元へ歩みよった。


「宣言通り1点とったんだから、あとは任せたぞ」


ベンチ全員に聞こえるように言った言葉は、先制して興奮している選手たちへの警告にも捉えられる。


翔吾はただ打っただけじゃなくて、もう次の回のことを見据えている。


絶対にミスは許されないというメッセージを受け取った野手たちは、途端に表情を引き締めて戦況を見つめる。


「偉大なキャプテンだな、お前は」


「お前が言うとイジってるようにしか聞こえねぇんだよ」


「いや、マジで思ってるよ」


「………きっしょ」


「……黙れ」


こんな時でもいつもと変わらない掛け合いに安心する。
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