雨降る日のキセキ
千隼くんは今、平常心だ。


一度は揺らぎかけたけど、なんとか乗り越えられたんだ。


持ち直したような凛々しい表情でベンチ前に出てキャッチャーボールを始める。


その姿は去年より一回りも二回りも凛々しくて堂々としたものだった。


結局、翔吾が打った1点以外は入らず、1-0で9回裏を迎えることとなった。


「千隼くん、頑張ってね」


「あぁ」


千隼くんはしっかりした足取りでマウンドへ向かっていく。


去年のサヨナラ満塁ホームランが忘れられない。


嫌でもあの記憶が蘇る。


しかも今年はたったの1点差。


県大会とは思えないレベルの声援が聞こえる。


千隼くんにも届いてるかな…?


皆、千隼くんの味方だからね。 


絶対、甲子園に行こう。


優勝しよう。


「千隼くんなら大丈夫」
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