雨降る日のキセキ
目が合ったからそう叫ぶと、かすかに頷いてくれた。


そして、最後の打者を迎える。


この調子ならいける。


高揚感が身体中を支配する。


あと、一歩。


あと、ひとり。


投じた初球。


危ない高さに見えたけど、空振り。


続く2球目は大きく外れてボール。


翔吾が“冷静に”とジェスチャーを送る。


夢舞台まであと一歩。


そして、3球目は緩いカーブでタイミングを外して空振り。


「追い込んだ!」


「千隼ーーー!!」


「あと1球ーーー!!!」


1ボール2ストライク。


ここまで来た。


制球に苦しむこともなく、確実にカウントをとれている。


苦しかった日々が走馬灯のように駆け巡る。


そして、4球目。


パァァン!!


スイングは空を切り、白球が翔吾のミットに収まった―。


「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

「っしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
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