雨降る日のキセキ
「なに?兄貴に嫉妬させようとしてんの?」


「違うよ。ただ抱きついただけ」


「なんだそれ。…あ。この虹は、兄貴の微笑みなんじゃね?一瞬の雨は兄貴の涙。俺に千紘を取られた悔し涙だな」


「それも違うよ。祝福の虹と、嬉し涙だよ」


「へー」


「信じてないでしょ」


ポツ、ポツ、ポツ


また雨が降ってきた。


「ほら、早く帰れって兄貴が怒ってんだよ。帰ろう」


「ふふっ、そうだね。帰ろっか」


紺色の傘にふたりで入り、くっついて歩き始める。


徐々に小さくなっていく丘を振り返ると、まるで手を振るように木々が揺れていた。


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