雨降る日のキセキ
失くし物と優しさ
華に忠告されてから3日。
自分からは話しかけてないようにしていても、千隼くんはガンガン話しかけてくる。
そのたびに華の鋭い視線を感じるけど、教室にいるときは何もしてこない。
きっと千隼くんや他の男子がいる手前何もできないのだろう。
部活中はお互い暇ではないし、移動教室やトイレは夏菜と一緒だから華が手出しできる隙はない。
そのおかげでこの3日間は平和に生活できていた。
「これ、サンキュ。参考になった」
お昼休みが終わる頃、千隼くんが1冊のノートを手渡してきた。
夏の予選で勝ち進めば必ずぶつかる強豪校、光西学院(こうせいがくいん)の研究ノートだ。
歴代の先輩たちが独自にデータを分析し、攻略方法や有効な戦略をまとめていったもので、光西対策がつまった大切な1冊だ。