雨降る日のキセキ
―カキーーーン!


幻想の世界から現実に引き戻すような甲高い金属音が、千隼くん一色だったグラウンドを引き裂く。


「あ…」


外野の頭を越えるツーベースヒット。


長打が一本出ればホームに帰れる得点圏にランナーを背負う。


1アウト2塁。


「おーい!!集中しろバカ野郎!」


翔吾が檄を飛ばす。


そして、ベンチを振り返って監督とではなく私と目を合わせてきた。


…なんで…?


「アイツはアイツで、俺を見ろよ…。マネージャー見てもしょうがねぇだろ…」


監督がまた呆れてため息をついている。


そんなことはつゆ知らない翔吾がサインを出したけど、千隼くんは首を振った。


翔吾がサインをゴリ押ししてるのか、千隼くんは頑なに首を振り続ける。
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