雨降る日のキセキ
「だからお願い。あの子には近づかないで…?私、心配なの。千隼くんがあの子に騙されてるんじゃないかって」


千隼くんの表情は私の席からじゃ見えない。


私…そんな性格だと思われちゃったのかな…。


「千紘はそんな奴じゃない。付き合いは短くても俺には分かる」


華の眉がピクピク震えている。


鋭い眼光がこちらに飛んできて、首元がヒュッと冷たくなる。


「私…悲しいよ。もうすっかり騙されちゃってるんだね」


可憐な女の子ぶるのが上手い華。


そんな華を千隼くんはどう見ているんだろう。


「……。このノートありがとな」


千隼くんは素っ気無く言い放って華の元から離れた。


怖くて華の顔が見られない。


これじゃ嫌がらせが激しくなるのは目に見えている。


千隼くんが私を信じてくれたのは嬉しいけど、それ以上に華の報復が怖いんだ。


だから私は千隼くんを避けた。


ノートを持って私の元へ寄って来る千隼くんも目が合ったけど、無視して教室を出ていった。


千隼くんの悲しそうな顔を打ち消そうともがきながら。
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