雨降る日のキセキ
千隼くんを見上げると、彼は少し困ったように視線を泳がせる。


そして、真っ直ぐに私を見つめる。


「千隼くん…?」 


さっきまで吹いていた風が止み、穏やかな空気が漂う夕方の公園。


千隼くんはやけに真剣な顔をしている。


「俺…千紘のことが好きなんだ」


「…へっ…?」


一瞬、時間が止まったようだった。


…私のことが好き…?


千隼くんが…?


「…嬉しいけど…」


でも…。


その気持ちには応えられない。


「わかってる。生きてる人間は死んだ人間には勝てない。そんなの俺が1番わかってる。でも…それでもいいくらい俺は千紘が好きだよ」


「千隼くん…」


そんなふうに言ってくれる人がいるなんて、なんて幸せなことなんだろう。
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