この度、筋肉バカ王子の教育係に任命されました
今回の事件については公にはされなかったーーというより、できなかった。
王家にとってあまりに醜聞すぎたからだ。
事件は秘密裏に処理されて、事件にかかわった者たちは表向きは捏造された違う罪で裁かれることになり、事情を知るものには緘口令が敷かれた。
事件に関与したメイドは、脅されていたということもあり、修道院送りで許された。
マルゴットとボルス侯爵令嬢は生涯幽閉の身となり、第五妃については、その身に王の子供を宿していることもあり意見が割れたが、第一王子と第二王子の殺害及び、第三王子の殺害未遂という罪は重く、子供を出産したのちに死罪となることが決まったという。腹の子供もろともの死という刑にならなかったのは、国王が議会の結論に必死で抵抗したからだという話だ。
シャーロットには興味はなかったが、婚約者であるマルゴットが幽閉され、レドモンドは茫然自失の体であるという。男爵家からも勘当され、婚約者が捕らえられたレドモンドは、この先、社交界では生きていくことはできないだろうとのことだった。
シャーロットはーー
「どういうことよ!?」
すっかり元気になったシャーロットは、木の棒を握り締めて叫んでいた。
「どうもなにも、そういうことだ」
目の前で上半身裸になって腕立て伏せをしている筋肉バカ王子ーーアレックスは、そんなシャーロットに平然と返す。
シャーロットはアレックスの教育係という任を解かれ、報酬も約束通り支払われたがーー、なぜか城から邸に帰ることができなかった。
それもこれもーー
「だからどうしてわたしがあんたの婚約者なの!?」
突然降ってわいてきた、アレックスとの婚約の話のせいだった。
アレックスはため息をついて腕立て伏せをやめると、立ち上がって汗を拭きながら答えた。
「何度も言わせるなよ。お前は今回のことにかかわりすぎた。王家としてはお前が余計なことを漏らさないか監視下におきたい。ならば俺の婚約者としてそばに置いたほうがいろいろと都合がいいだろう?」
「わたしは誰かに言いふらしたりしないわよ!」
「お前がそうでも王家はそう思わない」
「なによそれ! あんた今や王位継承順位一位の王子でしょ! 王家なんて黙らせなさいよ!」
「無理だった」
アレックスは肩をすくめた。
シャーロットは木の棒を握りしめたままわなわなと肩を震わせる。
実はアレックスはシャーロットとの婚約について王家に反論はしておらず、それどころかアレックス自らが立太子の条件として挙げたということをシャーロットは知らない。
アレックスは小さく笑いながら、今にも木の棒で殴りつけてきそうな雰囲気を漂わせているシャーロットを見やった。
(手放すものか)
こんな面白い女はほかにいない。女を信用できなかったアレックスが、唯一そばに置きたいと思った女なのだ。
一度は城から追い出そうとしたのに、出ていかなかったシャーロットも悪い。
あの時は手放せたが、アレックスは、もうシャーロットを手放せない。
「安心しろ、俺は一夫多妻制には反対だ。妃はお前だけだから、面倒な争いごともなくていいぞ」
嬉しいだろうーー
そう問われて、シャーロットはついに木の棒を振り上げた。
「勝手に決めるなーーー!」
シャーロットは木の棒を振り回してアレックスを追い回し、二人はしばらく部屋の中で追いかけっこを続けたのだった。
王家にとってあまりに醜聞すぎたからだ。
事件は秘密裏に処理されて、事件にかかわった者たちは表向きは捏造された違う罪で裁かれることになり、事情を知るものには緘口令が敷かれた。
事件に関与したメイドは、脅されていたということもあり、修道院送りで許された。
マルゴットとボルス侯爵令嬢は生涯幽閉の身となり、第五妃については、その身に王の子供を宿していることもあり意見が割れたが、第一王子と第二王子の殺害及び、第三王子の殺害未遂という罪は重く、子供を出産したのちに死罪となることが決まったという。腹の子供もろともの死という刑にならなかったのは、国王が議会の結論に必死で抵抗したからだという話だ。
シャーロットには興味はなかったが、婚約者であるマルゴットが幽閉され、レドモンドは茫然自失の体であるという。男爵家からも勘当され、婚約者が捕らえられたレドモンドは、この先、社交界では生きていくことはできないだろうとのことだった。
シャーロットはーー
「どういうことよ!?」
すっかり元気になったシャーロットは、木の棒を握り締めて叫んでいた。
「どうもなにも、そういうことだ」
目の前で上半身裸になって腕立て伏せをしている筋肉バカ王子ーーアレックスは、そんなシャーロットに平然と返す。
シャーロットはアレックスの教育係という任を解かれ、報酬も約束通り支払われたがーー、なぜか城から邸に帰ることができなかった。
それもこれもーー
「だからどうしてわたしがあんたの婚約者なの!?」
突然降ってわいてきた、アレックスとの婚約の話のせいだった。
アレックスはため息をついて腕立て伏せをやめると、立ち上がって汗を拭きながら答えた。
「何度も言わせるなよ。お前は今回のことにかかわりすぎた。王家としてはお前が余計なことを漏らさないか監視下におきたい。ならば俺の婚約者としてそばに置いたほうがいろいろと都合がいいだろう?」
「わたしは誰かに言いふらしたりしないわよ!」
「お前がそうでも王家はそう思わない」
「なによそれ! あんた今や王位継承順位一位の王子でしょ! 王家なんて黙らせなさいよ!」
「無理だった」
アレックスは肩をすくめた。
シャーロットは木の棒を握りしめたままわなわなと肩を震わせる。
実はアレックスはシャーロットとの婚約について王家に反論はしておらず、それどころかアレックス自らが立太子の条件として挙げたということをシャーロットは知らない。
アレックスは小さく笑いながら、今にも木の棒で殴りつけてきそうな雰囲気を漂わせているシャーロットを見やった。
(手放すものか)
こんな面白い女はほかにいない。女を信用できなかったアレックスが、唯一そばに置きたいと思った女なのだ。
一度は城から追い出そうとしたのに、出ていかなかったシャーロットも悪い。
あの時は手放せたが、アレックスは、もうシャーロットを手放せない。
「安心しろ、俺は一夫多妻制には反対だ。妃はお前だけだから、面倒な争いごともなくていいぞ」
嬉しいだろうーー
そう問われて、シャーロットはついに木の棒を振り上げた。
「勝手に決めるなーーー!」
シャーロットは木の棒を振り回してアレックスを追い回し、二人はしばらく部屋の中で追いかけっこを続けたのだった。