友達の彼氏だと思ってた同級生は、私を溺愛する最強総長さまでした。~ONE 史上最強の暴走族~
「…ユナ?どうして、向坂がその名前を…」

「だって、数学の時間にそうつぶやいてたから」


寝起きだったから、覚えてないのかな…?


すると、一之瀬くんは眉を下げて遠くに目をやった。


その表情は、見ていて胸が締めつけられるくらい…とても切ない。


「“ユナ”は…。俺の大切な人の名前だ」

「そうなんだ。好きな人?」

「たぶん、この世で一番愛してた」

「『たぶん』…?それなら、わたしと同じで曖昧じゃ――」


と言いかけて、わたしはとっさに口をつぐんだ。


もしかしたら、わたしは聞いてはいけないことを聞いてしまったのかもしれない…。


『愛してた』なんて、ちょっとやそっとのことじゃ堂々と口に出せない。

だから、心の底から好きだということはわかったけど――。


言い方が、…過去形。
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