呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます!


倒れた私は、あの出会いのあった夜会を思い出していた____。





私は田園の広がる地方の田舎貴族だ。

そして、私が10歳の頃お母様が他界し、お父様は愛人だった継母をすぐに後妻にと据えた。そして、後妻には娘もいた。

私の一つ下のノーラという義妹。お父様には隠し子がいたのだ。



継母も義妹も、私と亡きお母様のせいでいつまでも結婚できず、義妹に至ってはそのせいで私生児扱いで苦労したと、私を責めた。

お母様はもしかしたら知っていたかもしれないけど、私は愛人のことも義妹がいることも今まで知らなかったのに……。



それからの日々は、私は家族の厄介者扱い。お父様は私のせいで義妹ノーラが貴族としての生活が出来なかったのだ、と義妹との生活を取り戻すかのように甘やかした。



そして、義妹が17歳になれば、こんな田舎は嫌だと我が儘を言い、王都へと引っ越すことになった。

それにはどうやら、アーサー殿下の出席する夜会に行きたかったらしく、人づてに招待状まで手に入れてきた。



しかし、その招待状は二通あった。

手配してくださった貴族様は娘が二人いるからと気を利かせたらしい。

まさか娘が二人いても、長女の私が家族から疎まれて、いびられているなんて思いもよらなかったのだろう。



お父様達は招待状を手配して下さった貴族様の顔を潰すと次も良い夜会に招待してもらえなくなると考えたのか、私も渋々参加することになった。



しかし、新しいドレスなんてない。

古いドレスの直せるところは私でも直せるかと思っていると、義妹のノーラと継母がドレスを持ってきた。

ノーラのドレスだが、継母がよく着るような胸の開いたドレスを渡されゲンナリする。



確かに昼間のドレスは肌の露出を少なく、夜のドレスは艶やかに着こなす為に肌の露出が多くなるドレスが多いけど……ちょっと胸が開きすぎでは?



「……このドレスは私には、似合わないと思いますが……」

「まぁぁ!? 折角準備したドレスなのに文句をつけるなんて! 本当に性格が悪いわ!」



継母に性格が悪いと叱られると、義妹はクスクスと嘲笑う。

しかも、折角準備したドレスといっても、ノーラのお下がりですけどね。



「どうせ、殿下の目に止まらないんだから、これで充分よ。お姉様に差し上げるわ」



殿下であるアーサー様には、こんな胸の開いたドレスは似合わないと言わんばかりのノーラに、わざと私が目に止まらないようにする為にこんなドレスを寄越したのだろう。



「……わかりました。では、これを頂きます」



継母と義妹は嘲笑で部屋から出ていき、廊下からは、あんな男を誘うようなドレスで、殿下の目に止まるはずはないと、大笑いだった。



そして、私はせめてもと、古いシースルーのショールを裂き、胸の谷間がよく見えないように胸元に裂いたシースルーの布を縫った。なるべく野暮ったくならないように、シワを残すような感じで、緩みを残す感じで夜会までに仕上げた。



夜会に行く馬車の中では、ノーラは「こんな殿下も出席するような夜会で、自分で手を加えたドレスなんて恥ずかしいですわ。普通はオーダーメイドですわよ」と笑う。



確かに、ノーラのはオーダーメイドのドレスでいかにも私のよりも、良いドレスだった。

そのドレスで満面の笑みで夜会入りするノーラはすぐさまご令嬢達の輪を見つけ入ってしまう。



「お姉様は来ないで下さいよ!」

「そうするわ」



私は行く気もなく、さっさと壁の花になる。



早く帰りたいと思う気持ちと、この夜会が場違いな気持ちが大きく、私は一人でバルコニーへと出た。

アーサー殿下が夜会にいるせいか、ご令嬢達も含め誰一人バルコニーにはいない。



そこにあろうことか、見目麗しい男性がやってきた。

ずっと壁の花になっていた私が目についていたらしい。



「名前は?」と聞かれて、答えない訳にはいかない。



「リーファ・ハリストンです……」

「可愛い名前だ……中には入らないのですか? 良ければ私と一曲いかがですか?」

「すみません……ダンスはちょっと……」



ほとんど出来ません!

継母が来てからダンスの練習は無くなりましたから、私には無理です!



「人混みが苦手なら、部屋でお話でも……」



この方は女性に断られたことがないのだろう。ぐいぐい来る。



「どうぞ、ご一緒に……」



そう言って、見目麗しい男性は私の手を掬い上げるように取った。しかし、知らない方と二人っきりで部屋に行くなんてあり得ない。

控室が準備されているなら上位貴族だろうけど、いきなり部屋に誘うなんて怖い!

控室じゃなくて、そういうことをする部屋かもしれないし!



「……すみませんっ! 私……もう、失礼しますのでっ……」

「お待ちを……!」









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