呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます!
ノーラは、アーサー様の元に戻れと、泣き喚くが戻りたいとは思えない。
ジェフさんはそんなノーラ達を見ていぶかしんでいる。
「リーファ様……何かおかしいです……」
ジェフさんは視線をずらしながら周りを見ている。
「ジェフさん……?」
「いくら朝早いからといっても、周りに街人がいません……こんなに騒いでいるのに、パン屋さんも気付かないなんて……」
その言葉に背筋がゾッとした。
「リーファ……! 帰る気はないのね!?」
継母が睨みつけ言った。
「帰りません! 私の家族は旦那様とクローリー家の皆です!」
私の帰るべき邸はあの怖いヘルハウスだけです!
継母にそう断言すると、ジェフさんはすぐにこの場から立ち去りましょうと、焦っている。
私もすぐにジェフさんとこの場を離れようと慌てるように歩き出した。
でも、周りから屈強な男達が私達を囲むように現れてきた。
「逃げましょう! リーファ様!」
「はい!!」
ジェフさんと走り出し、私達の走る先を塞ぐ男にジェフさんは持っていた砂糖の紙袋を投げつけた。
「近付くな!! ……リーファ様! 早く!」
こんな私兵は知らない。
ハリストン家にこんなに沢山の私兵を雇うことが出来るのだろうか。
さっきは、継母が落ち目だと言っていたのに……!
「男は始末しても構わない! リーファ嬢を捕まえるんだ!」
私兵がそう叫ぶ。
そして、本当にジェフさんに向かって剣を振り下ろされる。
「止めて!?」
ジェフさんを庇うように後ろから突撃するようにしがみついた。
周りを私兵に囲まれて、私達は逃げられなくなっている。
いつの間に囲まれていたなんてわからない。最初から、隠れて見張っていたようにも思える。
でも、私もジェフさんも普通の人なんです。気配なんてわからない。
「リーファのことは調べてあるのよ。朝早くから、よくパン屋に来ていることも調べたわ。仲睦まじい夫婦と評判だと噂も聞いたわ。自分だけ幸せになるなんて許せないわ。ノーラにはもう良い縁談なんてないのに……!」
継母は私兵の間から、勝ち誇ったように言った。でも、その顔は私を恨んでいる顔だ。
「……お父様はどうしましたか?」
「もう、王都にはいられないといって、田舎に帰ったわ……! リーファにもう関わるなと! リーファが疫病神だから、私は離縁まで言い渡されたわ! 大事にしなかったのは、私だけじゃなかったのに!」
お父様はもう私を見限って、さっさと捨てて逃げたのだろう。
「お姉様をアーサー様に引き渡せば、私達は報奨金が貰えるのよ! それでお父様の所に帰るわ!」
お父様に捨てられたら、継母もノーラももう貴族でいられない。
だから、必死なのだ。
追い詰められて泣き喚き、目先の報奨金に目が眩んでいる。
そして、周りを囲んでいるのは、アーサー様の私兵だとわかった。
私を捕まえる為に、継母達と一緒に送り込んだのだ。
アーサー様の私兵なら、ジェフさんに容赦はしない。
八つ当たりで、痛めつけるような人だ。
こんな朝に現れたのも、街で私の様子を調べていたのだろう。
「素直に帰れば、こんなことにならなかったのに……!」
泣き喚きたいのは、私の方だった。
ジェフさんがいなければ、きっとそうしていただろう。
「ジェフさん……逃げて下さい。アーサー様はジェフさんに何をするかわかりません」
「一緒でないと……っ! 時間さえ稼げば、ガイウス様もロウさんもきっと来ます!」
でも、今すぐにはここに現れない。
「私なら大丈夫です。私兵達は私を傷付けることは出来ません」
「いけません! ……一緒にクイニーアマンを焼く約束をしたじゃないですか!?」
旦那様の為に焼きたかった。
それすら、出来ない。
「私は行きます」
もう、私に逃げる術はなかった。
きっと、このままだとジェフさんは殺されてしまう。
私が私兵達と行っても、ジェフさんを追いかけて行く気さえする。
そう思い、私兵達に聞こえないように、小さな声で、ジェフさんに言った。
隠し通路へ━━━━と。
「……リーファ様?」
「…旦那様にきっとお化けになってでも帰って来ます。とお伝え下さい。旦那様が好きなのです」
ジェフさんにそう言うと、しがみついた手を離し、私兵達の前に歩いた。
「ジェフさんを追うようなことは許しません。目的は私ですよね」
「では、馬車に乗って頂きましょう」
ジェフさんは、力ない自分を恨むように、この場から逃げた。
でも、それでいいのだ。
ジェフさんがいなくなったことを確認し、私は用意された馬車に足を踏み出した。
私兵はまだ動いていないが、きっと馬車が動き出すと、ジェフさんを追うだろう。
少しでも、旦那様への報告を遅らせる為に。
馬車には鍵を閉められて、窓も少ししか開かないようにされている。
周りは私兵が前後左右を固め、まるで囚人の護送だった。
ただ、馬車が立派で、豪華なだけで……。
もうすぐで、日が完全に昇る。
私の意識はなくなるだろう。
旦那様が来てもわからない。
「……っ旦那様……」
涙を流し、日の昇りと共に、意に反する眠りには抗えなかった。
ジェフさんはそんなノーラ達を見ていぶかしんでいる。
「リーファ様……何かおかしいです……」
ジェフさんは視線をずらしながら周りを見ている。
「ジェフさん……?」
「いくら朝早いからといっても、周りに街人がいません……こんなに騒いでいるのに、パン屋さんも気付かないなんて……」
その言葉に背筋がゾッとした。
「リーファ……! 帰る気はないのね!?」
継母が睨みつけ言った。
「帰りません! 私の家族は旦那様とクローリー家の皆です!」
私の帰るべき邸はあの怖いヘルハウスだけです!
継母にそう断言すると、ジェフさんはすぐにこの場から立ち去りましょうと、焦っている。
私もすぐにジェフさんとこの場を離れようと慌てるように歩き出した。
でも、周りから屈強な男達が私達を囲むように現れてきた。
「逃げましょう! リーファ様!」
「はい!!」
ジェフさんと走り出し、私達の走る先を塞ぐ男にジェフさんは持っていた砂糖の紙袋を投げつけた。
「近付くな!! ……リーファ様! 早く!」
こんな私兵は知らない。
ハリストン家にこんなに沢山の私兵を雇うことが出来るのだろうか。
さっきは、継母が落ち目だと言っていたのに……!
「男は始末しても構わない! リーファ嬢を捕まえるんだ!」
私兵がそう叫ぶ。
そして、本当にジェフさんに向かって剣を振り下ろされる。
「止めて!?」
ジェフさんを庇うように後ろから突撃するようにしがみついた。
周りを私兵に囲まれて、私達は逃げられなくなっている。
いつの間に囲まれていたなんてわからない。最初から、隠れて見張っていたようにも思える。
でも、私もジェフさんも普通の人なんです。気配なんてわからない。
「リーファのことは調べてあるのよ。朝早くから、よくパン屋に来ていることも調べたわ。仲睦まじい夫婦と評判だと噂も聞いたわ。自分だけ幸せになるなんて許せないわ。ノーラにはもう良い縁談なんてないのに……!」
継母は私兵の間から、勝ち誇ったように言った。でも、その顔は私を恨んでいる顔だ。
「……お父様はどうしましたか?」
「もう、王都にはいられないといって、田舎に帰ったわ……! リーファにもう関わるなと! リーファが疫病神だから、私は離縁まで言い渡されたわ! 大事にしなかったのは、私だけじゃなかったのに!」
お父様はもう私を見限って、さっさと捨てて逃げたのだろう。
「お姉様をアーサー様に引き渡せば、私達は報奨金が貰えるのよ! それでお父様の所に帰るわ!」
お父様に捨てられたら、継母もノーラももう貴族でいられない。
だから、必死なのだ。
追い詰められて泣き喚き、目先の報奨金に目が眩んでいる。
そして、周りを囲んでいるのは、アーサー様の私兵だとわかった。
私を捕まえる為に、継母達と一緒に送り込んだのだ。
アーサー様の私兵なら、ジェフさんに容赦はしない。
八つ当たりで、痛めつけるような人だ。
こんな朝に現れたのも、街で私の様子を調べていたのだろう。
「素直に帰れば、こんなことにならなかったのに……!」
泣き喚きたいのは、私の方だった。
ジェフさんがいなければ、きっとそうしていただろう。
「ジェフさん……逃げて下さい。アーサー様はジェフさんに何をするかわかりません」
「一緒でないと……っ! 時間さえ稼げば、ガイウス様もロウさんもきっと来ます!」
でも、今すぐにはここに現れない。
「私なら大丈夫です。私兵達は私を傷付けることは出来ません」
「いけません! ……一緒にクイニーアマンを焼く約束をしたじゃないですか!?」
旦那様の為に焼きたかった。
それすら、出来ない。
「私は行きます」
もう、私に逃げる術はなかった。
きっと、このままだとジェフさんは殺されてしまう。
私が私兵達と行っても、ジェフさんを追いかけて行く気さえする。
そう思い、私兵達に聞こえないように、小さな声で、ジェフさんに言った。
隠し通路へ━━━━と。
「……リーファ様?」
「…旦那様にきっとお化けになってでも帰って来ます。とお伝え下さい。旦那様が好きなのです」
ジェフさんにそう言うと、しがみついた手を離し、私兵達の前に歩いた。
「ジェフさんを追うようなことは許しません。目的は私ですよね」
「では、馬車に乗って頂きましょう」
ジェフさんは、力ない自分を恨むように、この場から逃げた。
でも、それでいいのだ。
ジェフさんがいなくなったことを確認し、私は用意された馬車に足を踏み出した。
私兵はまだ動いていないが、きっと馬車が動き出すと、ジェフさんを追うだろう。
少しでも、旦那様への報告を遅らせる為に。
馬車には鍵を閉められて、窓も少ししか開かないようにされている。
周りは私兵が前後左右を固め、まるで囚人の護送だった。
ただ、馬車が立派で、豪華なだけで……。
もうすぐで、日が完全に昇る。
私の意識はなくなるだろう。
旦那様が来てもわからない。
「……っ旦那様……」
涙を流し、日の昇りと共に、意に反する眠りには抗えなかった。