呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます!
逃げようとした私を引き留めようとする男性に、会場からご令嬢達が男性を追いかけてきた。どうやら、男性がいないと寂しいなど騒いでいる。
その隙に私は逃げた。
しかし、「ちょっと、お待ちを……!?」と追いかけてくる。更に、“ちょっとお待ちを“男性の後ろにはワラワラと女性達も黄色い声を上げて追いかけてくる。
怖すぎる! こんな集団で追いかけてくるなんて怖すぎる!
これが都会なの!? 嫌すぎる!
ドレスの裾を持ち上げ、必死で走り曲がり角に差し掛かった所で、人が一人出て来てしまい、気付かない私はその方に追突してしまった。
「すっ、すみませんっ!」
頭から追突し、慌てて謝ると追突された男性は無言で見下ろしていた。
男性は漆黒のような黒髪に金の瞳、長身で、さっきの"ちょっとお待ちを"男性とは反対の容姿に見えた。
そして、後ろからは集団が距離を縮めて来ている!
「……あれはなんだ?」
男性は不思議そうに追いかけて来る集団を見て聞いてきた。
「へ、部屋に連れ込まれそうになって……! た、助けて下さい!」
「部屋に?」
見ず知らずの男性の腕に震える手でしがみつき懇願すると、「……後ろにいなさい」と私を背中に隠してくれた。
見目麗しい"ちょっとお待ちを"男性を先頭に、集団が追い付くと、見ず知らずの男性が制止してくれた。
「アーサー様、何をなさっておいでですか? 女性を追い回すなど……」
「お、追い回しているわけでは……」
「女性を困らすなど殿下のすることではありませんよ」
「こ、困らす!? 少し話がしたくて声をかけただけだ」
「なら、一度引くべきかと……後ろのご令嬢達も対処された方がよろしいですよ」
アーサー様と呼ばれた男性は後ろのひたすら走りハァハァと息づかいも荒いご令嬢達を見て、困り顔になった。
「アーサー様、では失礼しますよ……君、さぁ来なさい」
「は、はい! ……あの失礼します」
アーサー様と呼ばれた男性に失礼しますと頭を下げて、助けてくれた男性の後ろについていった。
殿下と呼んだ気もするけど、きっと気のせいだ。そう思うくらい追いかけられたことが、訳がわからなかった。
「あ、あの……ありがとうございます……」
「……別に。また追って来るかもしれないから、もう帰りなさい」
「は、はい……でも、馬車が……まだ義妹が夜会にいるので、私一人が馬車に乗って帰るわけには……義妹はまだ帰らないと思いますし……」
「……なら、俺が送ろう。義妹には先に帰ったと、伝言させれば問題ないだろう」
「は、はい!」
良かった。この怖い夜会からもう帰れる!
バクバクする心臓を抑えながら、少しだけ胸を撫で下ろし、夜会の馬車乗り場に着くと、助けてくれた男性は馬車乗り場にいた初老の男性をロウと呼んで声をかけた。
「ロウ、もう帰るぞ。彼女の妹が夜会にいるらしいから、送っていったと伝えてきてくれ」
「畏まりました。して、ご令嬢のお名前は?」
助けてくれた男性の後ろから、申し訳ないと思いながらも姿を出し、ロウと呼ばれた執事の方に伝えた。
「リーファ・ハリストンです。義妹はノーラ・ハリストンと言います。私よりもはっきりした色のブラウンの髪で……」
「はい、わかりました。すぐにお伝えします」
「すみません、お願いします」
ロウと呼ばれた執事の方にペコリとお辞儀すると、引き締まったシワのある顔が笑顔になり、そのまま夜会に行ってくださった。
名前と髪の色ぐらいでわかるのかと思ったが、助けてくれた男性に聞くとロウなら大丈夫だ、と男性の馬車に連れて行かれる。
男性の馬車は辻馬車で夜会の為に貴族が借りる馬車を借りて来ていたようだった。
辻馬車の御者に自宅を伝えると、貴族街のお邸は把握しているようで、ハリストンはまだ馴染みがないようだけど、邸の場所は知っていた。
以前住んでいた貴族が辻馬車を利用していたのかもしれない。
そして、助けてくれたとは言え男性と馬車の中に二人になるが、男性は寡黙な方で腕を組んで外を見ている。それに倣うように自宅の邸に着くまで私も外を見ていた。
それが、さっきまで追われて心臓がバクバクしていた私には落ち着く時間に思えて、とても助かっていた。
その隙に私は逃げた。
しかし、「ちょっと、お待ちを……!?」と追いかけてくる。更に、“ちょっとお待ちを“男性の後ろにはワラワラと女性達も黄色い声を上げて追いかけてくる。
怖すぎる! こんな集団で追いかけてくるなんて怖すぎる!
これが都会なの!? 嫌すぎる!
ドレスの裾を持ち上げ、必死で走り曲がり角に差し掛かった所で、人が一人出て来てしまい、気付かない私はその方に追突してしまった。
「すっ、すみませんっ!」
頭から追突し、慌てて謝ると追突された男性は無言で見下ろしていた。
男性は漆黒のような黒髪に金の瞳、長身で、さっきの"ちょっとお待ちを"男性とは反対の容姿に見えた。
そして、後ろからは集団が距離を縮めて来ている!
「……あれはなんだ?」
男性は不思議そうに追いかけて来る集団を見て聞いてきた。
「へ、部屋に連れ込まれそうになって……! た、助けて下さい!」
「部屋に?」
見ず知らずの男性の腕に震える手でしがみつき懇願すると、「……後ろにいなさい」と私を背中に隠してくれた。
見目麗しい"ちょっとお待ちを"男性を先頭に、集団が追い付くと、見ず知らずの男性が制止してくれた。
「アーサー様、何をなさっておいでですか? 女性を追い回すなど……」
「お、追い回しているわけでは……」
「女性を困らすなど殿下のすることではありませんよ」
「こ、困らす!? 少し話がしたくて声をかけただけだ」
「なら、一度引くべきかと……後ろのご令嬢達も対処された方がよろしいですよ」
アーサー様と呼ばれた男性は後ろのひたすら走りハァハァと息づかいも荒いご令嬢達を見て、困り顔になった。
「アーサー様、では失礼しますよ……君、さぁ来なさい」
「は、はい! ……あの失礼します」
アーサー様と呼ばれた男性に失礼しますと頭を下げて、助けてくれた男性の後ろについていった。
殿下と呼んだ気もするけど、きっと気のせいだ。そう思うくらい追いかけられたことが、訳がわからなかった。
「あ、あの……ありがとうございます……」
「……別に。また追って来るかもしれないから、もう帰りなさい」
「は、はい……でも、馬車が……まだ義妹が夜会にいるので、私一人が馬車に乗って帰るわけには……義妹はまだ帰らないと思いますし……」
「……なら、俺が送ろう。義妹には先に帰ったと、伝言させれば問題ないだろう」
「は、はい!」
良かった。この怖い夜会からもう帰れる!
バクバクする心臓を抑えながら、少しだけ胸を撫で下ろし、夜会の馬車乗り場に着くと、助けてくれた男性は馬車乗り場にいた初老の男性をロウと呼んで声をかけた。
「ロウ、もう帰るぞ。彼女の妹が夜会にいるらしいから、送っていったと伝えてきてくれ」
「畏まりました。して、ご令嬢のお名前は?」
助けてくれた男性の後ろから、申し訳ないと思いながらも姿を出し、ロウと呼ばれた執事の方に伝えた。
「リーファ・ハリストンです。義妹はノーラ・ハリストンと言います。私よりもはっきりした色のブラウンの髪で……」
「はい、わかりました。すぐにお伝えします」
「すみません、お願いします」
ロウと呼ばれた執事の方にペコリとお辞儀すると、引き締まったシワのある顔が笑顔になり、そのまま夜会に行ってくださった。
名前と髪の色ぐらいでわかるのかと思ったが、助けてくれた男性に聞くとロウなら大丈夫だ、と男性の馬車に連れて行かれる。
男性の馬車は辻馬車で夜会の為に貴族が借りる馬車を借りて来ていたようだった。
辻馬車の御者に自宅を伝えると、貴族街のお邸は把握しているようで、ハリストンはまだ馴染みがないようだけど、邸の場所は知っていた。
以前住んでいた貴族が辻馬車を利用していたのかもしれない。
そして、助けてくれたとは言え男性と馬車の中に二人になるが、男性は寡黙な方で腕を組んで外を見ている。それに倣うように自宅の邸に着くまで私も外を見ていた。
それが、さっきまで追われて心臓がバクバクしていた私には落ち着く時間に思えて、とても助かっていた。