呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます!
アーサー様しか呪いが解けないと、言われて呆然としたまま数日が過ぎていた。
窓辺に座り、いつか旦那様が来るかもと、期待するように塞ぎ込んでいても、窓から見える景色は厳重な警備で変わらない。
「リーファ……手を出せ。包帯を替えるぞ」
「触らないでください……」
後ろから凭れるように抱きしめて来るアーサー様に抵抗する気力は段々と薄れている気がしていた。
もうヘルハウスに帰れない…と思うと同時に、諦めきれないのに、気力だけが削がれている気がしていた。
毎日甲斐甲斐しく包帯を替えられ、私のが終われば、アーサー様の包帯を替える。
包帯替えが終われば、いつも通りアーサー様は首筋に唇を落とす。至極満足そうに。
「私に触らないでくださいと言ったはずです」
「呪いが解けなくてもいいのか?」
「アーサー様に召されるくらいなら、このままでいいです…アーサー様は本当に私が好きなのですか?」
「当然だ。俺から逃げた女はリーファだけだ」
「それは、ただ珍しかっただけでは?」
「そうかもしれんが……」
「……本当に好きなら、私の為に今すぐにお茶をください。温かいお茶を……」
「なら、すぐに持って来させよう」
「アーサー様が準備してください。使用人に頼まずに……本当に好きなら出来ますよね?」
アーサー様は、お茶くらいなら……と、初めて私に頼まれたのが、意外と嬉しかったのか、また甲斐甲斐しくお茶を取りに行った。
私はその隙に、ドアの前にキャビネットを必死で押し動かした。
ずりずりと音はするが、廊下の警備はアーサー様がいないと、勝手に私の部屋に入れないから、このくらいの不審な音では踏み込んで来ない。
緊急事態だと見なされていないのだろう。
この間のアーサー様から逃げ回っている時も、誰も踏み込んでなかったし。
今も廊下では、何の音だ? やアーサー様がいない時は、リーファ様の姿は見てはいけないだろ。 と会話が聞こえる。
必死で動かしたキャビネットの引き出しとドアを天蓋のベッドのカーテンの紐で結び部屋に入って来れないようにした。
せめてもの抵抗だった。
部屋を見渡すと、もう花瓶など割れそうな調度品はない。
外の様子もわからないから結婚式の日もわからない。
虚しさに襲われそうな時にアーサー様は帰って来た。
「リーファ……!? 開けろ! 何をしているんだ!?」
フンッと返事もせずに窓辺に座る。
「白ちゃん……旦那様が近くに来てないか、見てきてくれる? ……きっといないだろうけど……」
妾として来てから、もう何日も経つ。
アーサー様のお手つきになったと旦那様は思っているかもしれない。
それなら、旦那様は諦めてきっと来てくれないと思ってしまう。
白ちゃんがいなければきっと諦めていた。
既に、もう来た時より気力が減っている。
そして、元気なのはアーサー様だ。
キャビネットで塞いだドアを大きな音を立て壊し、入って来た。
ちょっとは諦めて欲しい。
あれだけ拒否されているのに、どうして挫けないのか……て言うか、挫けてください!
「リーファ……何故こんなことを?」
「私は一人になりたいのです」
「そうか……それより、ゼリーも出来てたんだ。食べさせてくれ」
「……ご自分で食べてください」
「リーファのせいで手が痛い」
ドアを開かないようにしたことはどうでもいいらしい。
大体仕事に行くんだから、痛いわけない!
アーサー様は慣れないながらも私の頼んだお茶を並べ、さぁ、やってくれ、というように、スプーンを渡してきた。
使用人たちはドアを片付け、キャビネットを直している。
あの怖い女官の人はジロリと私を見て、思わずビクッとしてしまう。
「……どうぞ」
アーサー様は私に食べさせてもらい、満足そうにゼリーを食べていた。
私とアーサー様……温度差は、計り知れなかった。
窓辺に座り、いつか旦那様が来るかもと、期待するように塞ぎ込んでいても、窓から見える景色は厳重な警備で変わらない。
「リーファ……手を出せ。包帯を替えるぞ」
「触らないでください……」
後ろから凭れるように抱きしめて来るアーサー様に抵抗する気力は段々と薄れている気がしていた。
もうヘルハウスに帰れない…と思うと同時に、諦めきれないのに、気力だけが削がれている気がしていた。
毎日甲斐甲斐しく包帯を替えられ、私のが終われば、アーサー様の包帯を替える。
包帯替えが終われば、いつも通りアーサー様は首筋に唇を落とす。至極満足そうに。
「私に触らないでくださいと言ったはずです」
「呪いが解けなくてもいいのか?」
「アーサー様に召されるくらいなら、このままでいいです…アーサー様は本当に私が好きなのですか?」
「当然だ。俺から逃げた女はリーファだけだ」
「それは、ただ珍しかっただけでは?」
「そうかもしれんが……」
「……本当に好きなら、私の為に今すぐにお茶をください。温かいお茶を……」
「なら、すぐに持って来させよう」
「アーサー様が準備してください。使用人に頼まずに……本当に好きなら出来ますよね?」
アーサー様は、お茶くらいなら……と、初めて私に頼まれたのが、意外と嬉しかったのか、また甲斐甲斐しくお茶を取りに行った。
私はその隙に、ドアの前にキャビネットを必死で押し動かした。
ずりずりと音はするが、廊下の警備はアーサー様がいないと、勝手に私の部屋に入れないから、このくらいの不審な音では踏み込んで来ない。
緊急事態だと見なされていないのだろう。
この間のアーサー様から逃げ回っている時も、誰も踏み込んでなかったし。
今も廊下では、何の音だ? やアーサー様がいない時は、リーファ様の姿は見てはいけないだろ。 と会話が聞こえる。
必死で動かしたキャビネットの引き出しとドアを天蓋のベッドのカーテンの紐で結び部屋に入って来れないようにした。
せめてもの抵抗だった。
部屋を見渡すと、もう花瓶など割れそうな調度品はない。
外の様子もわからないから結婚式の日もわからない。
虚しさに襲われそうな時にアーサー様は帰って来た。
「リーファ……!? 開けろ! 何をしているんだ!?」
フンッと返事もせずに窓辺に座る。
「白ちゃん……旦那様が近くに来てないか、見てきてくれる? ……きっといないだろうけど……」
妾として来てから、もう何日も経つ。
アーサー様のお手つきになったと旦那様は思っているかもしれない。
それなら、旦那様は諦めてきっと来てくれないと思ってしまう。
白ちゃんがいなければきっと諦めていた。
既に、もう来た時より気力が減っている。
そして、元気なのはアーサー様だ。
キャビネットで塞いだドアを大きな音を立て壊し、入って来た。
ちょっとは諦めて欲しい。
あれだけ拒否されているのに、どうして挫けないのか……て言うか、挫けてください!
「リーファ……何故こんなことを?」
「私は一人になりたいのです」
「そうか……それより、ゼリーも出来てたんだ。食べさせてくれ」
「……ご自分で食べてください」
「リーファのせいで手が痛い」
ドアを開かないようにしたことはどうでもいいらしい。
大体仕事に行くんだから、痛いわけない!
アーサー様は慣れないながらも私の頼んだお茶を並べ、さぁ、やってくれ、というように、スプーンを渡してきた。
使用人たちはドアを片付け、キャビネットを直している。
あの怖い女官の人はジロリと私を見て、思わずビクッとしてしまう。
「……どうぞ」
アーサー様は私に食べさせてもらい、満足そうにゼリーを食べていた。
私とアーサー様……温度差は、計り知れなかった。