呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます!
ロウさんは、釣り小屋のある近くの村に行き、今夜はそちらで泊まってくれるようで、明日には私たちに食事を持って来てくれることになっている。



旦那様はあの呪いのお茶は飲んだけど、アーサー様と同じで異常はない。

私みたいに冷たいものが身体を走ることはなかった。



私の呪いは解けたと思うけど、日が昇るまでは確信がなく、まだ日が昇らないのかしら、と窓の外を見ている。

日が昇るのを待ち構えている私と違って旦那様はもう眠いようで、ベッドでうとうとしていた。



「旦那様、もうすぐに日が昇りますよ」

「そうか……」



眠そうな旦那様の隣に座り、頭を撫でるとさらさらの黒髪が愛しいと思う。



「旦那様、ヘルハウスに帰ったらクイニーアマンを焼きますね。ジェフさんが教えてくれたんです」

「クイニーアマンは好きだ。楽しみだな……」



そう言ってくれると、何だか嬉しい。

窓を見ると、少しずつ光が射し込んできている。



「旦那様、日が昇ります……」

「俺は運がいいと言っただろう」

「はい……」



全く眠気はこない。

呪いが終わったのだと実感する。

久しぶりに見た日の光を浴びたくなり、開けた窓に寄ると、眩しいと思う。

懐かしい眩しさだった。



日の光を浴び、感無量な私を見て、眠気を擦るように起き上がった旦那様はやっと服を着てくれた。



「少し外に出るか?」

「はい!」



外に出ると何もかもが、眩しかった。

全て旦那様のおかげだと、感謝してもしきれない。



「旦那様、ありがとうございます。旦那様のおかげです」



旦那様の腕の中でそう言うと、旦那様は何も言わず、抱きしめてくれる。



そんな中、ロウさんが村から戻ってきた。



「おやおや、仲がよろしいことで」



朝食を持って来てくれたロウさんは、早速湖の側に敷物を敷き、パンや飲み物を並べる。

しかも、意外と豪華だった。



「お祝いにはほど遠いですが、どうぞ。ヘルハウスに帰れば、ご馳走にいたしましょう」



出されたサンドイッチを、旦那様にどうぞと、差し出すと少しだけ笑ってくれた。

旦那様の笑みを見るのは何だか貴重な気がして得をした気になる。



「食べたら、城に向かうか?」

「はい……ニール殿下とアーサー様をお助けしましょう……!」



アーサー様のことを何とかしないと、また私のところに来るかもしれないし、なによりもアーサー様が悲しいのだ。



ロウさんは、こんな私たちを見て、ふふっと笑っていた。









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