呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます!
「キャアアーー!! 旦那様! 旦那様――!」
「クローリー夫人を守れ!!」
どうして私を狙ってくるの!?
どす黒いモヤモヤは間違いなく私に向かって一直線に飛んできた。
周りの警備たちには魔法の使える者もおり、私や高官二人を守ろうと魔法の
障壁を張るが、誰もあのどす黒いモヤモヤは浄化出来ない。
風の音なのかこのどす黒いモヤモヤの唸り声なのか、気持ち悪い唸り声がこの一体に響くのが恐怖を煽る。
このどす黒いモヤモヤは王妃様のはずなのに、何故私が狙われるのかわからない。
私は田舎の貴族で、こんな王都の夜会も一度しか出席したことがない。
そんな私が王妃様にお会いすることがあるわけない!
お会いしたことがないのに、恨まれる理由があるわけない!
そもそも、王妃様はもう何年も前に亡くなられており、私はそのころは田舎にいたのだ。
王妃様が私を狙う理由なんかないはずなのに、このどす黒いモヤモヤはずっと私を攻撃しようとしている。
警備たちがいなかったら、既にこのどす黒いモヤモヤに取り込まれていたかもしれない。
「リーファ!! あんたも道連れにしてやるわ!!」
廊下に這いつくばりながら、抑えられているキャシー様は最後の一つと思われる何かの薬品の小瓶を、蓋を開けたまま転がした。
「早く連れて行け!! クローリー夫人にキャシー嬢を近付ける……な……っ」
高官の一人が叫ぶと、たちまち眠気が襲いかかる。
バタバタと周りの警備たちも膝をつき倒れそうな状態を堪えている。
それでも、このどす黒いモヤモヤはすかさず私を襲おうとしており、恐怖から悲鳴が出た。
「キャアアーー!?」
「リーファ様! こちらに!」
ガシャン! ガシャーンッーー!?
大きな音と共に廊下の窓をロウさんが持っていたナイフを投げて次々に割っていき、すかさず私を守りに来てくれた。
ロウさんは、キャシー様の小瓶で皆が眠りに落ちようとしたことを察したのだ。
そのおかげで外の風と共に、薬品の匂いが外に流れていった。
「リーファ様、もうすぐでガイウス様が王妃様をあの世に送られます。それまでの辛抱ですよ」
「は、はい……」
少し薬を吸ったせいか気を抜くと眠ってしまいそうだった。
ロウさんに支えられながら、陛下の部屋を見ると確かに黒いものは来た時よりも減っている。黒いものの奥には旦那様の光も見える。
「契約書はすぐに見つかりました。アーサー様なら難なく取り出せたので、すぐにガイウス様が王妃様に送り火の魔法を使ったのですが……」
「恨みが強すぎるのですか?」
「王妃様は生前から嫉妬深い方でしたからね。しかし、何故リーファ様を狙うのでしょうかね……」
「わかりません。お会いしたこともありませんし……先日はアーサー様がいたから助かったと思うのですが……。キャアッ……!?」
支えられている身体の後ろに何かの衝撃が走る。
物理的なものではなかった。
「背中に……なにかがっ……!」
ロウさんは異変に気付き、すぐに誰か浄化出来る者を! というが、誰の魔法でもこのモヤモヤだけは消せない。そもそも消せるなら、旦那様を呼ぶことさえなかった。
王妃の亡霊がいる限りモヤモヤを消しても意味がないのだ。
私の頭の中では、『許さない……! ソニア!』という言葉が響いている。
「いや……! 入ってこないで! 私はソニアじゃありません!」
「まさか……!? 王妃様! この方はソニア様ではありません!」
ロウさんが何を言っても無駄だった。
この王妃様の亡霊にはなにも届かない。
王妃様の亡霊の声に私の頭が押しつぶされそうだった。
ロウさんの、しっかりしてください! という耳元の声のほうが遠くに聞こえている。
どうして私が、ソニアという方と間違えられたのかわからない。
ただ、押しつぶされそうな意識の中にあったのは旦那様のことだけ……。
旦那様のところに帰りたい。
旦那様とヘルハウスに帰りたい。
私は、お化けになっても旦那様のいるヘルハウスに帰ると……。
「出てってーー!!」
「クローリー夫人を守れ!!」
どうして私を狙ってくるの!?
どす黒いモヤモヤは間違いなく私に向かって一直線に飛んできた。
周りの警備たちには魔法の使える者もおり、私や高官二人を守ろうと魔法の
障壁を張るが、誰もあのどす黒いモヤモヤは浄化出来ない。
風の音なのかこのどす黒いモヤモヤの唸り声なのか、気持ち悪い唸り声がこの一体に響くのが恐怖を煽る。
このどす黒いモヤモヤは王妃様のはずなのに、何故私が狙われるのかわからない。
私は田舎の貴族で、こんな王都の夜会も一度しか出席したことがない。
そんな私が王妃様にお会いすることがあるわけない!
お会いしたことがないのに、恨まれる理由があるわけない!
そもそも、王妃様はもう何年も前に亡くなられており、私はそのころは田舎にいたのだ。
王妃様が私を狙う理由なんかないはずなのに、このどす黒いモヤモヤはずっと私を攻撃しようとしている。
警備たちがいなかったら、既にこのどす黒いモヤモヤに取り込まれていたかもしれない。
「リーファ!! あんたも道連れにしてやるわ!!」
廊下に這いつくばりながら、抑えられているキャシー様は最後の一つと思われる何かの薬品の小瓶を、蓋を開けたまま転がした。
「早く連れて行け!! クローリー夫人にキャシー嬢を近付ける……な……っ」
高官の一人が叫ぶと、たちまち眠気が襲いかかる。
バタバタと周りの警備たちも膝をつき倒れそうな状態を堪えている。
それでも、このどす黒いモヤモヤはすかさず私を襲おうとしており、恐怖から悲鳴が出た。
「キャアアーー!?」
「リーファ様! こちらに!」
ガシャン! ガシャーンッーー!?
大きな音と共に廊下の窓をロウさんが持っていたナイフを投げて次々に割っていき、すかさず私を守りに来てくれた。
ロウさんは、キャシー様の小瓶で皆が眠りに落ちようとしたことを察したのだ。
そのおかげで外の風と共に、薬品の匂いが外に流れていった。
「リーファ様、もうすぐでガイウス様が王妃様をあの世に送られます。それまでの辛抱ですよ」
「は、はい……」
少し薬を吸ったせいか気を抜くと眠ってしまいそうだった。
ロウさんに支えられながら、陛下の部屋を見ると確かに黒いものは来た時よりも減っている。黒いものの奥には旦那様の光も見える。
「契約書はすぐに見つかりました。アーサー様なら難なく取り出せたので、すぐにガイウス様が王妃様に送り火の魔法を使ったのですが……」
「恨みが強すぎるのですか?」
「王妃様は生前から嫉妬深い方でしたからね。しかし、何故リーファ様を狙うのでしょうかね……」
「わかりません。お会いしたこともありませんし……先日はアーサー様がいたから助かったと思うのですが……。キャアッ……!?」
支えられている身体の後ろに何かの衝撃が走る。
物理的なものではなかった。
「背中に……なにかがっ……!」
ロウさんは異変に気付き、すぐに誰か浄化出来る者を! というが、誰の魔法でもこのモヤモヤだけは消せない。そもそも消せるなら、旦那様を呼ぶことさえなかった。
王妃の亡霊がいる限りモヤモヤを消しても意味がないのだ。
私の頭の中では、『許さない……! ソニア!』という言葉が響いている。
「いや……! 入ってこないで! 私はソニアじゃありません!」
「まさか……!? 王妃様! この方はソニア様ではありません!」
ロウさんが何を言っても無駄だった。
この王妃様の亡霊にはなにも届かない。
王妃様の亡霊の声に私の頭が押しつぶされそうだった。
ロウさんの、しっかりしてください! という耳元の声のほうが遠くに聞こえている。
どうして私が、ソニアという方と間違えられたのかわからない。
ただ、押しつぶされそうな意識の中にあったのは旦那様のことだけ……。
旦那様のところに帰りたい。
旦那様とヘルハウスに帰りたい。
私は、お化けになっても旦那様のいるヘルハウスに帰ると……。
「出てってーー!!」