呪われた令嬢はヘルハウスに嫁ぎます!
ヘルハウスに着くと、扉を蹴りだし急いで馬車から飛び降りた。



「ガイウス、この身体なんか動きにくいんだから、優しくしてね」

「うるさい。リーファはどこだ!? リーファ!!」



動きにくいというリーファの身体に入っているジュリアを抱きかかえて、邸へと走る。

動きにくいのは、おそらくリーファの身体が死にかけていたからだ。



「ロウ! リーファを探せ! リーファ! どこだ!?」

「わかっています!」

「邸の中を彷徨っていたから、どこにいるかしらね~~。……キャッ!?」



邸内に一歩踏み入れると、呑気なジュリアは急に弾きだされるようにリーファの身体から飛び出してきた。



「何をしているんだ! まだ、リーファの魂を見つけてないんだぞ! 勝手に出るんじゃない!」

『知らないわよ! 急にはじき出されたのよ!』



何で勝手にはじき出されるんだ!?



「リーファ! リーファ!!」



これでもかというほど叫んだ。

リーファの身体を抱えたまま焦り、走ると真っ直ぐな廊下の暗がりから白いものが、ゆっくりと現れていた。



後ろには、ギルバード卿が騎乗のまま主を守る騎士のようについて来ている。



「リーファ……」



虚ろに彷徨う姿はリーファだった。



リーファを抱きかかえたまま、近づくとリーファの魂も浮いたまま止まる。



「リーファ……俺だ。ガイウスだ」

『私……旦那様のところに行かないと……』



目線は合わず、リーファは下を向いたまま表情は虚ろだった。



『クローリー公爵のことしか呟かず、話もかみ合わないのですよ。ずっと、どこを見ているのでしょうな……』



ギルバード卿が困ったように、髭をかきながらそう言った。



「大丈夫だ……すぐに戻してやる。リーファ、手を……」



リーファの白く透明な手をとると、顔がこちらを向くように上げてきた。



『旦那様……』

「そうだ……やっと会えた……」



魂になっているリーファを抱き寄せると、リーファは、『旦那様……』と呟き、通り抜ける魂でもたれてくれた。

どこまで俺を認識しているのかはわからないが、リーファは身を任せるようにしていた。



「リーファ、還ってきなさい……」

『旦那様……』



抱き寄せているリーファは、ゆっくりと煙のようにかき消えるが天には昇らない。

もう1つの腕にいるリーファの身体に吸い込まれるように消えていった。



リーファの頬を撫でるように触れると、うっすらと瞼が開く。

薄いブラウンの瞳はどこか弱々しいが、ジュリアが乗り移っていた時とは違う。

間違いなくリーファの瞳だった。



「旦那様……」

「もう大丈夫だ」

「ずっと探していました……。旦那様が、どこにもいなくて……」

「ずっとここにいる。少し休みなさい。側にいるから……」

「はい……離さないでくださいね……」



そう言ってリーファはまた瞼を閉じた。それでも、弱々しいながらもリーファは、俺の腕を掴んで離さなかった。

どれほど心細い思いをしたのか……。

無理やり身体から魂がでて、彷徨っている間は何者か分からずに孤独だったのだ。



リーファをみると、また胸になにかがこみ上げてくる。

無事に見つかった安堵か、リーファにまた会えて感無量なのか、色んな事がわからないほどこみ上げていた。



「リーファ……リーファ……」



そのまま眠るリーファを部屋に連れていき、目が覚めるまで片時も離すことはできなかった。













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