【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「おかえり」
「ただいま、まつり」
「外寒くなかったか?」
「うん、大丈夫だった」
幹部室に入れば、外と比べてすこし暖かい。
それだけで十分なのに、わたしのためにと置かれているブランケットを、まつりがわたしを包むように肩に掛けてくれた。
「ありがとう」
お礼を言うと、そっと頭を撫でられる。
それから愛おしそうに見つめられて、じわりと熱くなる頬。
「なんかあったら言えよ」
「え? あ……うん」
わたしの額にキスを落として、まつりは離れる。
視界の先で、「あんまり食べると晩ごはん食べれないよ」と咲ちゃんが子どもみたいな注意をされていた。
「まつり」
せっかく温かいのを出してもらったのに、そのまま出掛けてしまったせいで冷めきった紅茶。
紅茶自体は甘くて美味しいけれど、冷たさと同時に来る独特な苦味があって、後味はあまり美味しくない。
「、」
彼の制服のネクタイ。
それを軽く引っ張るようにして動きを制限すると、そのくちびるに、自分のそれで触れる。