【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
……え?
「女には興味を示さないって言われてる舘宮くんが、あんたを庇ったも同然!
それで"何もない"なんてこと、あるわけないでしょ!?」
どうして?
舘宮くんからはそんな話、一言も聞いてない。それどころか、井瀬谷くんからも、一言も。
「何したの?
何して、舘宮くんたちに近づいたの?」
「なにも、」
「っ、あたし、小学校からずっと舘宮くんと同じ学校に通ってるの!
同じクラスになっても、話し掛けても、あたしのことなんか彼は眼中に無い!なのになんで!?」
彼女の瞳が、潤む。
……この子は、ずっと。舘宮くんの、ことが。
「っ、なんで……そんな簡単に、」
バンッと、彼女が勢いよくわたしの机に手をつく。
涙が滲んでも落ちることの無い、真っ黒のアイラインが引かれた目。キッと強くわたしを睨む彼女。
「っ、あたし、あたしは……!」
「……もうそれくらいにしておいたら?」
「っ、」
ガラッと、扉が開く。
教室の中へと入ってきたのは、爽やかそうな茶髪の男の子。誰だろう。
「そんな風に詰め寄ったからって、相手の気持ちが手に入るわけじゃないよ。
それに。……いいの? 俺がチクっちゃっても」