【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



本当にわたしが彼らの"姫"であるならともかく、いまはそんな仲じゃない。

なのに、播磨くんは「そうですか?」と首を傾げて。



「これも舘宮くんからの指示なんですけど」



「……え?」



「彼女たちに、雫さんが昼終わりに声を掛けられてたことを舘宮くんには伝えました。

そしたら、今みたいに面倒なことになったら介入するよう指示されたんです」



「そう、なの?」



どう、して?

さっきの学年集会のことと言い、このことと言い。気にかけてくれているようなその素振りに、すこしだけ戸惑う。



そんなこと、一言も言ってなかったじゃない。

なのにわたしの知らないところでそうやって動いてくれてたなんて聞かされて。……どうしろと。




「っ、播磨くん。

舘宮くん、もう帰ったかしら?」



「さっき廊下で様子を伺ってた時、

幹部の皆さんが階段おりていくのを見ましたよ」



「っありがとう」



ごめん帰るね!と。

助けてくれたことに対してあまりお礼が言えなかったことを悔やみつつ、教室を飛び出す。階段を駆け下りて昇降口に向かったけれど、彼等の姿はない。



っ、さすがにもう帰っちゃったかな。



「……っ、はあ、」



スマホの中に彼の連絡先があるのだから、メッセージでも電話でもすればいい。

頭では分かっているのに、"いま直接言わなきゃ"ってこの衝動を、止められない。



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