【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
すっかり花を散らした桜並木を抜けて、その姿を見つける。
「舘宮くん!」と呼び掛けたそれに、彼以外の4人も振り返った。
「雫ちゃん?」
「っ、よかった、追い付けて、」
息切れするわたしの言葉を、目の前の彼は待ってくれる。
すこし呼吸を整えて「舘宮くん」ともう一度彼の名前を呼んだ。
「ありがとう。
色々助けてくれたって、播磨くんから聞いた」
「別に助けてねえよ。
現に今、俺はコイツらとここにいるだろ」
その言い方を考えると、播磨くんに介入するよう伝えたのは、本当に彼で合っているらしい。
彼以外の4人はそれについて知らないようで、不思議そうな顔をしていた。
「でも、ありがとう。
どうしても直接言いたかったから」
「………」
「ごめんね、引き止めて」
舘宮くんが、じっとわたしを見る。
それから「雫」と呼ばれただけなのに、脳が甘く痺れたような気がした。なぜか急に、その瞳から目を逸らせなくなる。
「お前、」
「………」
「俺の女になる気ねえか?」