【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
見透かしたような言葉に、じわりと視界が滲む。
めんどくさい彼女になりたくないのに、ぽろぽろ涙がこぼれ落ちる。
「学校でね、人気者の男の子がいるんだけど……
その子に告白されて、断ったのね、」
「……うん」
「そ、したら、その子、人気あるから。
その子を好いてる女の子たちに、わたし、結構ひどめの悪口言われてて、」
「つまらない連中だね」
「っ、気にしないようにすればいいのは分かってるのよ。
わかってるんだけど……、」
ふとした時に思い出して、悲しくなってしまう。
気分が落ち込むのを朝顔のみんなの前では取り繕っていても、越の前では取り繕えない。
「ほんと、気にすることなんてないのに」
細く息を吐いた越が、指で涙を拭ってくれる。
そのままじっと見つめられて、触れるくちびる。
「今日は気分が良いから、慰めてあげる」
「っ、」
「嫌になるぐらい愛されてたらいいよ」
たっぷり、と。
耳元で囁かれただけなのに、ゾクリとしてしまうのはどうしてだろう。それを実行に移すようにわたしの思考まで奪う越は、出会ってからどれだけ経っても同い年には見えなくて。
肌蹴た彼のシャツを、握る。
越は嘘はつかない。──だから、気がついた時にはもう、他のことなんてすべて、どうでも良くなっていた。