【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「……はい?」
その声を出したわたしは、あまりにも滑稽だっただろう。
情けないそれに驚くけれど、生憎わたし以外にも優理や快斗、咲ちゃんが同じように驚きの表情を浮かべていた。
……いまこのひと、なんて言った?
「まあ、さすがにすぐにとは言わねえよ」
「や、……合ってるけど違うわね」
「何か問題あるか?」
大アリだ。
今の舘宮くんの言葉を鵜呑みにするのであれば、わたしはこの人の彼女にならないかと問われているらしい。うん、わたしの目的は一体なんだったっけ?
そう。ハニートラップ。
舘宮まつりを自分に惚れさせ、彼岸花に潜り込めればすべて解決。ミッションコンプリート。
おめでとう雫。よく頑張ったね。
……なんて、越が言うとでも思う?
「ごめん、冗談よね……?」
手の甲を額に当て、舘宮くんに問い掛ける。
この仕草、越がよくやるのよね。一緒に居すぎて移ったのかしら、なんて、半ば現実逃避のように考えるわたしに。
「俺がそんなことで冗談言うように見えるのか」
「うん、見えないから言ってるのよ!?」
これは現実だと教えんばかりの舘宮くんの返答。
っ、だってどう考えたっておかしいでしょ!?