【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「……げ、」
翌日。
なんとなく浮かない気持ちで登校すると、昇降口がすでに色めき立っている。
ちらり、言われるまでもないけれど視線を向けてみれば、確認できるのは舘宮くん、稜くん、快斗の3人。
……優理と咲ちゃんの姿は、見当たらない。
「おっ。雫じゃねーか」
「っ……!」
ちょっ、話しかけてこないでほしいんだけど!
全員が当たり前のように彼等からは距離を取っているというのに、わたしに気づいた快斗はスタスタとこちらに来る。
周囲の刺さるような視線があまりにも痛い。
「お、はよう……快斗」
「はよー。朝から疲れた顔してんな」
うん、いまこの会話必要?
こんなに見られてる中でこの会話必要なの?
「おはよう雫ちゃん」
「おはよう。稜くん、舘宮くん」
ほら、快斗のせいでふたりがこっちに来ちゃったじゃない……!
この状況で無視できるわけもなく、素直に挨拶だけして逃げようと思っていたら、舘宮くんは「おはよう」と言いながらわたしの頭を撫でる。
……あ、終わったかもしれない。
女の子たちが驚きと妬みと、とんでもない表情でわたしのこと見てるもの。