【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「っ、くく……気ぃ強ぇ女」
遠慮のない、笑い声。
聞き覚えのあるそれに視線を向けると、教室の入口で背中をドア枠に預けている、真っ赤なヤンキー。
「良いのかよまつり、お前の出番ねーってさ」
「ああ、そうだな」
「いいじゃねえの。
俺はしっかりしてる女の子、嫌いじゃねえもん」
「しずくん、はやくこっちおいでよー」
「迎えに来たよ、雫ちゃん」
彼岸花の幹部、勢揃い。
なんで、と。この時だけは、わたしと彼女たちの疑問は確かに一緒だった。……なんで、彼等が、ここに。
「まつりが、言うこと聞かなくてさ」
くすりと、稜くんが笑う。
……"言うこと聞かなくて"? なにを?
「雫」
「っ、」
強くはないのに鋭い声で、名前を呼ばれる。
あまりにもトップを誇るその存在感に、声も出せずにいたら。「こっちへ来い」と指示されて、逆らうことも無く彼等の方へ歩み寄る。
「お前に後悔させるつもりはねえ。
だからひとつだけ、俺のわがまま聞いてくれるか?」