【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「どう、して?
わたしたち、まだ出会ったばっかりなのに……」
「……さあ。それは秘密だな」
「っ、ズルい」
文句を吐き出すわたしを、穏やかな表情で「いつか教えてやるよ」と宥める舘宮くん。
思っていたより感情豊かだし、その気になれば揺さぶりはかけられそう。
「アイツら待たせてるから、もどるか」
「あっ、まって舘宮くん、」
わたしは彼のことが好きなわけではない。
舘宮くんだってそれを知っているだろうけど、もう一度ハッキリと伝えておかなきゃ。そう思って呼び止めるわたしを、振り返る舘宮くん。
「付き合ってんだから、名前でいい」
「……まつり、くん?」
「………」
「……、まつり」
「ああ、それで構わない」
……もしかして、この人意外にわがままだったりする?
わたしからの呼び方にこだわるあたり、性格が細かいのか、ただ可愛いだけなのか。見た目からは想像がつかないけれど、後者な気がする。
「まつり。
……わたし、あなたのこと好きなわけじゃないから」