【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
北に残してきた、大好きな朝顔のみんな。
たったひとりの、わたしの、とくべつな人。
「今は、だろ?」
「………」
「いずれは、お前に好きだって言わせる」
まつりには、相当な自信があるらしい。
まあその美貌を持っていたら、わたしだってそう思う気がするけど。そんな単純な女じゃない。
「ああ、安心しろよ。
お前が好きだって言うまで手は出さねえから」
キスはするけど、と。
それだけ言って先に歩き出してしまう彼は、果たして本当に今まで女に興味が無かったんだろうか。……結構、ズルいと思うんだけど。
「おかえりー」
みんなのところへ戻ると、咲ちゃんにニコニコ迎えられる。
まだお昼にノータッチなのを見て「ごめんね」と声を掛けたら、「別に待ってねーよ」と快斗に返された。……優しいんだか、優しくないんだか。
「雫、お前はこっちだ」
昨日と同じように優理の隣に座ろうとしたら、まつりが自分の隣を指さす。
……そうね、姫なら、総長の隣に座るべきよね。
「んー……こっちじゃだめ?」
「……、好きにすればいい」
でもわたしは、追われる女であって、追う女じゃないし。
昨日と同じ席に座るけれど、隣の優理はずっとスマホ操作に夢中で、わたしと言葉を交わそうとはしない。