【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



北に残してきた、大好きな朝顔のみんな。

たったひとりの、わたしの、とくべつな人。



「今は、だろ?」



「………」



「いずれは、お前に好きだって言わせる」



まつりには、相当な自信があるらしい。

まあその美貌を持っていたら、わたしだってそう思う気がするけど。そんな単純な女じゃない。



「ああ、安心しろよ。

お前が好きだって言うまで手は出さねえから」



キスはするけど、と。

それだけ言って先に歩き出してしまう彼は、果たして本当に今まで女に興味が無かったんだろうか。……結構、ズルいと思うんだけど。




「おかえりー」



みんなのところへ戻ると、咲ちゃんにニコニコ迎えられる。

まだお昼にノータッチなのを見て「ごめんね」と声を掛けたら、「別に待ってねーよ」と快斗に返された。……優しいんだか、優しくないんだか。



「雫、お前はこっちだ」



昨日と同じように優理の隣に座ろうとしたら、まつりが自分の隣を指さす。

……そうね、姫なら、総長の隣に座るべきよね。



「んー……こっちじゃだめ?」



「……、好きにすればいい」



でもわたしは、追われる女であって、追う女じゃないし。

昨日と同じ席に座るけれど、隣の優理はずっとスマホ操作に夢中で、わたしと言葉を交わそうとはしない。



< 122 / 295 >

この作品をシェア

pagetop