【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「優理」
「ん? どしたの、雫ちゃん」
「遊ぼうって話、もう飽きちゃったの?」
わざとらしく、目を逸らされる。
それから「そうじゃねえよ」と、申し訳程度に優理はお弁当を開くわたしの頭を撫でた。
「雫ちゃん、姫になっただろ~。
だからまつりの女に手出しちゃいけねえの、俺ら」
「……うん?」
「当然、俺が雫ちゃんと遊ぶのもだめ。
ってことで声掛けんのやめただけ。ほかの子探すよ~」
いつもみたいに笑ってくれてるけど、明らかに表情が違う。
過去にも鼓と同じようなやり取りをしたことがあるわたしは、残念ながらそこまで鈍感じゃない。滲み出た好意に気付かないほど、馬鹿な女じゃない。
「……そうなんだ。
遊べないし断るけど、声掛けてくれて嬉しかったのに」
「、」
「優理のおかげで、みんなと仲良くなれたのに……
ほかの子のとこ、行っちゃうんだ」
さすがに、あからさま過ぎた?
でもまつり以外にも、自分の味方をしてくれるメンバーを作っておかなきゃいけない。
今でも十分、みんなわたしの味方をしてくれてるけど。
何かあった時、私情を挟んででも、わたしの味方でいてくれる人。
「……、なにそれ、ズルすぎ」