【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
甘さを孕んだ、愛でるような視線。
こういう言い方をしておけば、優理がほかの女の子に構ってる暇なんて、絶対に無くなる。
『……雫ちゃんが越の彼女じゃなかったら良かったのになぁ、って。
思うことも、無いわけじゃないんやで』
『鼓、』
『でも越が拾わんかったら、雫ちゃんとは出逢えへんかった。皮肉やろ?
……まあ、気まずくしたいわけちゃうからこの会話は忘れてくれたらええんやけど、』
『………』
『一目見たときからかわいいなーって思てたよ。
ま、そんときから既に越に勝ち目無かったけど』
どうせバレてるやろうけど、越にはナイショやで。
鼓はこの会話以外でわたしのことを好きだと言ったことは一度もないし、ずっと変わらずに仲間として接してくれてる。
「姫のお願いなら、仕方ねえな。
女の子に声掛けんのはしばらくやめるよ」
「ほんと?」
「ん。……そんな気分でもないしな」
やっぱり優理と鼓は、似てると思う。
最初は、チャラいところが似てるなって思ったけど。
「オメー、悪い女だな」
「……? なにが……?」
「自覚ねーのかよ」