【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



快斗にため息をつかれたけれど、気づかないフリをして適当に誤魔化しておいた。

そう簡単に、動揺なんて見せちゃいけない。平然な顔で、いつか彼らを裏切らなきゃいけないんだから。



「そうだ、雫ちゃん。

今日の放課後って、時間あるかな?」



「今日の放課後?

うん、予定は特にないから大丈夫だけど、」



「よかった。

それじゃあ放課後空けておいてくれる?」



稜くんに問われて、うん、と返事をしながらも首をかしげる。

「姫を紹介したくて」と言われたそれだけで、彼等がわたしを彼岸花の倉庫へ連れていこうとしているのは簡単に分かった。



「彼岸花のメンバーみんなに、

雫ちゃんを姫にすることを伝えておかなきゃいけないから」



北連合で、わたしが朝顔の姫だと知っているのは、朝顔のメンバー及び傘下の幹部のみ。

それは当然、わたしが朝顔の姫であることが南側にバレてはいけないからで。




「わかったわ。

改めて、みんなよろしくお願いします」



ぺこりと頭を下げて、笑みを見せる。

よろしく、と問題なく全員が返してくれる彼等に、わたしを警戒している様子は皆無だ。



……潜入するにはとっても楽でいいけど、みんな簡単に騙されてくれるわね。

あまりにも警戒心が無さすぎると思う。



「失礼します」



ご飯を終えてしばらく話していたら、いつの間にか昼休みも残り数分。

旧図書室の扉がノックされ、ひょっこり顔を出したのは播磨くんだった。



「お迎えです、姫」



「ん? まつりが双のこと呼んだの?」



< 125 / 295 >

この作品をシェア

pagetop