【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
稜くんの問い掛けに「ああ」と返すまつり。
姫という立場にあるわたしを、クラスが違う幹部たちが常に気にかけることは厳しい。その点を補う部分で、幹部補佐の立場の彼はとても役に立つようだ。
「さっきはごめんね、雫さん。
俺がいないタイミングで、女の子たちに囲まれる羽目になったって、」
「ううん、あなたのせいじゃないわよ」
「ならいいんだけど……」
教室とこの旧図書室間も、幹部が一緒じゃない時はわざわざ播磨くんが送迎してくれるらしい。
「大丈夫なのに」と言ってみたけど、まつりはダメだと言って聞いてくれなかった。
「とりあえず、5限始まっちゃうから戻ろうか。
舘宮くん、放課後1組まで雫さん送り届けますね」
警戒心の弱さの割に、思ったよりもガードが固い。
朝顔メンバーと連絡を取り合えるタイミングがかなり限られるし、なかなか連絡できないって伝えておかなきゃ。
「雫。基本的に、双治から離れねえようにしろよ。
双治、お前に任せたからな」
「もちろんです、舘宮くん」
「変なことはしないから大丈夫よ。またあとでね」
播磨くんとふたりで、部屋を出る。
幹部といるとどうしても気を張ってしまうから、彼とふたりになるとすこしだけ肩の力が抜ける。
……それにしても。
この爽やかな見た目の播磨くんも彼岸花のメンバーなんだから、人って見かけによらないわよね。
「雫さん、無茶なこと言われたりしなかった?
……って、舘宮くんに姫になるように言われたとこからすでに、結構無茶言われてると思うけど」
「ふふっ、大丈夫よ。
確かに、びっくりはしたけど……」