【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
好きだ、と。
間違いなく、はっきり南のトップの男から言われた。それはつまり、北側の勝利がほぼほぼ確定しているということだ。
ハニートラップさえ成功すれば、あとは越がすべてやってくれる。
怪しまれないよう、勝利を確実にできるよう、北側に戻れるまではそう短くないけど。この感じだと、そう長くもない気がする。
「『最低でも1年半』……、ね」
6限終わりの女子トイレの個室内。
越に、まつりに姫宣言をされたことと、この後彼岸花の倉庫に行くことを告げて、期間を聞いてみれば返ってきたのはそんな返事。
まあ長期戦は覚悟の上だ。
仮に途中で北側に戻ったとしても、わたしは高校3年間をここで過ごさなきゃいけないわけだし。
「あら?」
『了解』と一言だけ返して、スマホをポケットに入れる。
手を洗って女子トイレから出ると、壁にもたれかかって待っていたはずの播磨くんがいなくなっていた。
その代わり。
そこにいたのは優理で、「お迎えだよ~」と笑う。
「播磨くんは?」
「双? 先にたまり場行かせたよ。
俺もちょうどお手洗い来たら雫ちゃん中にいるって言うから、出てきて交代した」
「ああ、そうなのね」
もどる途中に3組に立ち寄ってバッグを持ってから、優理と昇降口に向かう。
てっきり1組にいるのかと思ったけど、残りの4人は先に下にいるみたいだ。
「教室もどってから、なんか言われた?」
「昼終わり? 何にも言われてないわ。
何か言いたげな顔は至る所でされてるけど」