【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



それから、玄関の鍵を施錠して。

リビングに足を踏み入れ、スマホで連絡先の『兄』を呼び出すと、すぐに電話が繋がった。



『もしもし? 遅かったね、雫』



「ごめんなさい……

まつり追い払うのに手間取っちゃって」



『コレだからドジは……

まあいいや。追い払うのに手間取るぐらい、お前に執着させてるってことだと思っとくよ』



電話越しの彼は、決して兄じゃない。

さっきも言ったけれど、わたしに兄はいない。



(えつ)、ごめんね……」



謝罪の言葉を口にすれば、『は?』と不機嫌がわかる一言が返ってくる。

……マズい。落ち着かせようとして、地雷踏んだ。




『何が"ごめん"?

そういうのダルい。ってかそもそも俺が掛けた時に電話出れるぐらいの愛想の振りまきしなよ』



「だ、だって。

何度も電話で出ていったら怪しいじゃない」



『だからこそ、兄って登録してんじゃないの?』



「、」



『鈍臭いよね、お前』



冷たい一言に、喉の奥が熱くなる。

けれどそれもきっと、越をめんどくさいと思わせてしまうだけで。



『で、なんだっけ?

あーそうそう、お前なんだかんだで上手くやってそうだし。もうすぐ決行しようと思ってる』



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