【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「うわ、オメー6月生まれなのかよ。
俺より半年以上歳上じゃねーか。ムカつくな」
「弟にしてあげてもいいわよ」
「ならねーよ!
くっそ、俺より誕生日遅いヤツいねーのかよ」
その口ぶりからして、全員快斗よりも誕生日が早いらしい。
聞いてみたら、稜くんが4月、まつりが7月、優理が9月。咲ちゃんは12月で、そこから2ヶ月空くのを考えると、確かにそう言いたくなるのも分からなくはない。
あと、稜くんがいちばん誕生日が早いという点に、ものすごく納得した。
さすがはみんなの井瀬谷パパ。
「お前本当に物怖じしないな」
不意に。
黙っていたまつりにそう言われて、首をかしげる。
「物怖じ?」
「これから、暴走族のたまり場に連れてくって言ってんだぞ。
しかもそこで姫になったことを宣言させるってのに、よくいつも通りに話してられるな」
「ああ、そんなこと?」
たしかに、普通の人なら緊張したり怖がったりするのかもしれない。でもわたし、朝顔の姫だし。
……なんて、口には決して出せないけど。
「だって何かあったら、
みんながわたしのこと守ってくれるんでしょ?」
「っは、肝据わってていい女だよお前は」
ぽんぽんと頭を撫でられる。
まつりに"いい女"と褒められて、悪い気はしない。