【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
越はたまにわたしのことを褒めてくれるけど、そんな風にストレートに褒めてくれることはほとんど無い。
だから素直に「ありがとう」とお礼を言えば、まつりがすこし目を細めて。
「お前を選んで正解だって、すぐに分かるはずだ。
自信持って一緒に居りゃあいい」
「……うん、」
「お前をこっちに引き込んだことで、
もしお前や彼岸花に何かあった時の責任は俺がとる」
「大袈裟ねえ、まつり」
その言葉通り、後々責任を負ってもらわなきゃいけなくなっちゃうけど。
それはわたしの知った話じゃない。
大丈夫よ、なんて無責任な言葉で流し、たどり着いた彼岸花の倉庫前で一瞬息をつく。
ここが、彼岸花の倉庫。──朝顔と敵対するトップチームの、核部分。
「話があるから、全員集まって。
……まだ来てないメンバーには、あとで伝えるけど」
中に入ると稜くんがみんなに収集をかけ、みんなが素直にそれに従う。
朝顔と倉庫自体は似てるけど、こっちの方がみんな好き勝手楽しんで使ってる、って感じかな。割と街中にあるし、倉庫周辺には割と人目もある。
「今日から、この女を彼岸花の姫にする。
急な話で悪いが、幹部はすでに全員が納得した」
全員の視線を一点に集中させるだけの、カリスマ性。
誰もが目を逸らさずに、まつりの話を聞いてる。
「異議があれば唱えても構わない。
……ただ、彼岸花の"姫"になった女は手強いぞ?」
変なプレッシャー与えないでよ……なんて心の中で思いつつ、自らの判断で簡単に自己紹介を済ませ、ちらりとまつりを見やる。
彼もわたしを見ていたから、しっかりと目が合った。
「異議がねえなら、話は以上だ。
──何があっても絶対、姫のことは守れよ」