【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
ピンポイント。
名前を言い当てられて、笑ってしまったのは無意識だった。本当に、よく見てる。名前を出されなかったら、このまま嘘とバレていても誤魔化そうと思ったのに。さすがは彼岸花の副総長。
「快斗って。
……どちらかといえば真っ直ぐな人じゃない?」
「そうだね。
悪く言えばバカだなってこともよくあるけど」
「でもなぜか、接するのがむずかしいのよ」
感情が表に出やすくて、なおかつストレートでわかりやすい。
それなのに、なぜか掴めなくて。距離感が分からなくなる時があるのだ。だからわたしはこの間、自分の発言を、自分で疑った。
『キスでもする?』
あの時快斗は怪訝な顔をしたけれど、それが正解。
わたしにもわからないわたしの言葉を、他人が理解できるわけがない。
「嫌いなわけじゃ、ないのよ」
「知ってるよ。
それにたぶん、あいつもそう思ってる」
「………」
「ああ見えて、結構快斗は器用なとこあるんだけど。
それでも雫ちゃんのこと嫌ってたら、姫にすることなんて絶対に認めなかったと思うよ」
「そう、かな」
「うん。
だってあいつ、本当に不満なことがあれば、教師だろうとまつりだろうと食ってかかるよ」
見てる方がハラハラするけどね、と。
稜くんのその言葉からして、思い当たる節があるらしい。