【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



たしかに快斗は、物怖じせず相手に何でも伝えてしまうようなタイプの人だ。

わたしにだって、"清楚じゃないビッチ"なんて言ってきたくらいだし。



……わたしの、考えすぎ、なのかな。



「まあでも、たしかに変だよね」



「……へん?」



「ううん、こっちの話。

とにかく、快斗はバカ正直だから。雫ちゃんの心配するような、嫌われてるなんてことは無いよ」



それは俺が保証する、って。

稜くんのその言葉が心強くて、さっきとは違う笑みがこぼれた。誕生日の主役に励まされてどうするの。……、って、あれ?



「稜くん、なんでここにいるの?」




そもそも今日の主役がどうしてここにいるんだ……!

首を傾げて尋ねれば、彼は「息抜きだよ」と微笑む。



「ずっとみんなの相手してたら疲れるでしょ?」



「……やっぱり稜くんって、父親ポジションよね」



「俺に子どもなんていません」



くすくす。ふたりで笑い合って、目的である飲み物をグラスに注いでから「そろそろ戻るわ」と彼に告げる。

稜くんは一息ついてから戻るようで、幹部室を出ようとドアノブに手をかけた時。



「あ、雫ちゃん。今日の帰りなんだけど、」



優しい声に呼び止められて、くるりと振り返る。

それを相槌と受け取った稜くんは、そのまま言葉を続けた。



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