【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
「いつもはまつりが雫ちゃんのこと家まで送ってくでしょ?
でも、今日は家まで俺が送らせてもらうね」
「あら? まつり、何か用事でもあるの?」
「ううん。ほかの3人はプレゼントくれたんだけど、あいつだけ何にも用意してないって言うから。
じゃあプレゼントいらないから、その代わりに今日は俺に雫ちゃん送らせてってお願いしただけだよ」
今日の主役に送ってもらって良いんだろうか。
でも稜くんがそう言ったってことは、良いってことだろうし。むしろお願いまでしてくれたみたいだし。
「なるほど。よろしくお願いします」
「うん、帰る時にまた教えてね」
うん、と頷いて、今度こそドアノブをひねる。
廊下に出て後ろ手でドアを閉めてから、ようやくその先にあった人影に気づいた。
「……あら、いたの」
「今日の主役も、ウチの唯一の女もいねーからな。
呼んでこいってなって、ジャンケンに負けた」
「快斗、ジャンケン弱そうよね」
「ナチュラルに喧嘩売ってんな?」
廊下に付けられた電球の下。
光で色を揺らめかせる赤髪を見上げる。
「稜くんなら、一息ついたら戻るって」
「おー。なら俺も息抜きして戻るわ」