【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-



たしかにふたりは幼なじみだし、そういう仲じゃないのかもしれないけど。

幼なじみは幼なじみでも、鼓は越にいろんなものをプレゼントしてた。……でもあれは、鼓が越のことを大好きだからなのか。



越は逆に、鼓には必要のなくなったものを押し付けてたし。

鼓はそれすらもニコニコしながら受け取ってたけど。



「幼なじみもそれぞれね」



「……お前にもいるのか?」



「ん? ううん、知り合いの話」



首を横に振って、倉庫の中を見回す。

稜くんから返されたであろう『本日の主役』のタスキを肩にかけて、走り回っている子がいたり。それを追い掛けて、笑い合ってる子たちがいたり。後片付けサボるなって、ほかのみんなに怒られてたり。



当たり前のような日常の光景。

……この間快斗に、彼等と関わっていることを知ったら親はどう思う?って、聞かれたっけ。




「ねえ、まつりのご両親ってどんな人?

あ、べつに言いたくないならいいんだけど」



「あ? 何の変哲もない普通の親だよ。

父親はちょっとした会社の社長で、母親は専業主婦」



「ご両親とも、彼岸花のことは知ってるの?」



「知ってるな。

わざわざ7代目になった、とは言ってねえけど」



「……じゃあ反対とかは、されてないのね」



「……、」



黒い瞳がわたしを射抜く。

ため息とは言わずとも、すこし呆れを孕んだような息を落としてから「快斗か」と呟いたまつりは、どうやらわたしの言いたいことがわかるらしい。



< 160 / 295 >

この作品をシェア

pagetop