【完】黒蝶 -ふたりの総長に奪われて-
たしかにふたりは幼なじみだし、そういう仲じゃないのかもしれないけど。
幼なじみは幼なじみでも、鼓は越にいろんなものをプレゼントしてた。……でもあれは、鼓が越のことを大好きだからなのか。
越は逆に、鼓には必要のなくなったものを押し付けてたし。
鼓はそれすらもニコニコしながら受け取ってたけど。
「幼なじみもそれぞれね」
「……お前にもいるのか?」
「ん? ううん、知り合いの話」
首を横に振って、倉庫の中を見回す。
稜くんから返されたであろう『本日の主役』のタスキを肩にかけて、走り回っている子がいたり。それを追い掛けて、笑い合ってる子たちがいたり。後片付けサボるなって、ほかのみんなに怒られてたり。
当たり前のような日常の光景。
……この間快斗に、彼等と関わっていることを知ったら親はどう思う?って、聞かれたっけ。
「ねえ、まつりのご両親ってどんな人?
あ、べつに言いたくないならいいんだけど」
「あ? 何の変哲もない普通の親だよ。
父親はちょっとした会社の社長で、母親は専業主婦」
「ご両親とも、彼岸花のことは知ってるの?」
「知ってるな。
わざわざ7代目になった、とは言ってねえけど」
「……じゃあ反対とかは、されてないのね」
「……、」
黒い瞳がわたしを射抜く。
ため息とは言わずとも、すこし呆れを孕んだような息を落としてから「快斗か」と呟いたまつりは、どうやらわたしの言いたいことがわかるらしい。